2020 Fiscal Year Research-status Report
イギリス社会の移民に対する態度の淵源-18世紀イギリスにおける移民の受容と排除
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19K01080
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (00324731)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドイツ系移民 / ユダヤ系移民 / 帰化 / 移民の社会統合 / 18世紀イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、18世紀イギリス社会の各移民集団、主にユダヤ系とドイツ系移民の実態、具体的には定住状況、共同体の形成と展開、イギリス社会へのユダヤ人(ユダヤ・ディアスポラ)、ドイツ系移民(ドイツ系商人、パラタイン移民)の統合過程について研究を実施した。今年度は、主に二次文献を調査・収集し、それらの精読を順次行った。ドイツ系移民については、ドイツ人教会の形成とその役割、法的地位の取得状を調査した。ドイツ系移民は人数こそユグノーに比べ少ないにもかかわらず、大西洋貿易に関与し、18世紀前半に帰化取得者において顕著なプレゼンスを示していた。イギリス経済における彼らの貢献は少なくない。イギリスの帝国形成、とりわけインドにおいてもドイツ人たちが重要なアクターであったことも、明らかになった。 ユダヤ人については、二次文献を手がかりに史料調査を行った。二次文献については精読を進めている。17世紀後半と18世紀前半、イギリスに流入したユダヤ人は主にセファルディムで、富裕なユダヤ人であった。彼らのネットワークとイギリス社会への関与については、イタリアに拠点をおくユダヤ人と彼らの共同体に関する研究を参照することにより、イギリスとりわけロンドンがユダヤ・ディアスポラにとって重要な取引相手であったことも明らかになった。その一方で、18世紀前半の帰化取得者にしめるユダヤ人は少数であった。ただし、ユダヤ人としてではなく、別のナショナリティでの取得の可能性も否めないため、精査が必要である。今後、一般法による彼らの帰化をめぐる議論と、ユダヤ・ディアスポラのイギリス社会における貢献と統合を明らかにすることが新たな課題として明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大により、イギリスのみならず国内での史料調査や史料収集ができなかったため。年度前半は、研究会や学会なども中止になり、研究交流の機会が減少したことも一因である。それらに加えて、遠隔授業等、大学での教育現場における新型コロナウイルス対応に時間を取られ、研究時間の確保が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度もイギリスでの史料収集が困難であるなら、研究期間の延長も検討しながら、現状手できる研究の進展に努める。
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Causes of Carryover |
イギリスでの調査ならびに国内での調査が不可能であったため。
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