2021 Fiscal Year Research-status Report
イギリス社会の移民に対する態度の淵源-18世紀イギリスにおける移民の受容と排除
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19K01080
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (00324731)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近世イングランド / ドイツ系移民 / ユダヤ系移民 / 宗教難民 / 帰化 / 移民共同体による支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に実施した研究は以下のとおり。第一に、外国人教会の史料や遺言書をもとに、17世紀後半を中心としたフランス人教会、オランダ人教会による外国人教会や大陸出身の移民・難民への慈善活動に関する研究を進めた。移民たちが、誰(何)に対して、どのような遺贈行為を行ったかを分析にも取り組んだ。遺贈や慈善行為が移民たちの帰属意識形成を促進したことを明らかにした。第二に、18世紀のイングランドにおける移民、難民について、文献と資料の精読を行った。とくにドイツ系移民とユダヤ人移民に着目し、彼らの流入と共同体形成について、研準備準備を進めた。ユダヤ移民については、彼らに対する一般帰化法に関する議論を中心に、彼らとホスト社会の関係について、文献や史料の収集、精読を進めた。ユダヤ移民を初めとする移民たちがイングランド社会、とくに食文化に文化変容をもたらした過程についても考察を行った。18世紀の移民問題がそれ以降の移民受容にどのような影響を与えたのかについても、調査を実施した。18世紀以降に流入した移民(難民)たちは、18世紀以前の移民、とりわけユグノー、によって行われた技術移転をイングランドにもたらさなかった故に、移民すなわち社会問題とする現代に通じる認識を有する存在の先駆けとなった。第三に、近年研究が進んでいる近世イングランドの黒人についても、文献の収集を行った。文献の精読は今後の課題となるが、他の移民たちと比較し、数が少ない彼らがイングランド社会に与えたインパクを明らかにする。上記研究成果の一部を高校教員向けの講演会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航制限、国内での移動制限により、史料の調査収集が困難な状態にあるため。また、新型コロナウイルスに対応した教育負担と学内業務の増加のため、研究に支障が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航の制限が続く場合は、研究のテーマ、対象や範囲を現在ある史料で分析できるものに調整する。研究期間の延長申請を検討している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、海外渡航による史料調査と収集ができなかった。学会や研究会がオンライン開催となり、また勤務先による移動制限の指示により、国内出張ができなかったため。
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