2022 Fiscal Year Research-status Report
イギリス社会の移民に対する態度の淵源-18世紀イギリスにおける移民の受容と排除
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19K01080
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (00324731)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 帰化 / ドイツ系移民 / ユダヤ人 / 近世ロンドン |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀イングランド、とりわけロンドン市内に流入したユダヤ人とドイツ系移民について、関連文献や史料を用いて調査を行った。研究の途上で重要な存在として在英黒人の存在が浮上したため、ドイツ系・ユダヤ人移民との比較対象として、黒人に関する調査も実施している。16世紀後半から18世紀初頭までは、帰化もしくはデニズンの取得者の多くがユグノーであった。18世紀の帰化取得者について、取得者に関する史料を分析した。その結果、1710年代以降は、ユグノーの取得者は減少し、ドイツ系や東欧出身者の取得者が増加していることが明らかになった。職業については商人が多く確認できた。18世紀前半の帰化付与者にドイツ系が多いことから、イギリス社会が彼らの貢献に対して期待を寄せていたことも明らかになった。従来関心が寄せられてこなかった18世紀のドイツ系移民やドイツ系商人がイギリスの海外貿易や帝国形成に重要な役割を果たしていること、イギリス社会が帰化付与の前提として信仰以上に経済的利益を重視し、移民政策をシフトしたのではないかとの課題を提示できた。ユダヤ人についても、クロムウェルによる入国許可以前からユダヤ人が共同体を形成しながら信仰を維持していることが明らかになった。イタリアのリヴォルノのセファルディム共同体とロンドンのユダヤ人との間の交易が確認できた。ロンドンのユダヤ人については、ディアスポラネットワークという観点からも研究することが今後の課題である。帰化を付与する対象の変化を通じて、イギリス社会の移民政策の転機が18世紀にあると示唆することが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症による移動制限により国内外での調査ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は国内外での調査を再開し、不足している史料等の調査や分析を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症による移動制限のため国内外での調査・史料収集ができなかったため。今年度は海外での史料収集と調査を予定している。
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