2019 Fiscal Year Research-status Report
Reforming Time in the British Empire
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19K01085
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石橋 悠人 中央大学, 文学部, 准教授 (90724196)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 標準時 / 時間意識 / グリニッジ天文台 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には、先行研究の総括と本研究の理論的な枠組みの構築を通して、より実践的な問題設定を行った。その上で、グリニッジ天文台と本国および植民地の政府の関係を検討するため、夏期にグリニッジ天文台アーカイブズ(ケンブリッジ大学図書館)において一次史料の調査を行った。 とくに、グリニッジ天文台と植民地省や海軍省、東インド会社、植民地政府などの組織との間で交わされた書簡や公的な報告書を分析し、科学者と政治的権力との連携を検討することができた。グリニッジと各植民地の天文台間で技術移転に関してなされた連携に関する史料の調査にも着手し、現在その詳しい分析を行っている。これにより、グリニッジ天文台と政治組織・植民地天文台との結びつきを基盤として、時計、望遠鏡、時報装置などの時間の技術を移植する回路が形成された様子を明らかにしたい。 今年度の成果として、British Journal for the History of Science(イギリス科学史学会編)に、グリニッジ天文台長が提供する標準時の時報サービスについての論文が掲載された。この論文では、天文台長ジョージ・エアリが時間の標準化のためにとった多様な戦略や技術革新の内実を考察し、どのように標準時を伝える技術に対する信頼を得ようとしたかを明らかにした。近代イギリスにおける時間の標準化に関する研究は少なくないが、このような視角からの研究成果はこれまで乏しく、本研究に独自の成果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通りに先行研究の整理と理論的な枠組みの構築を行い、そのうえで、ケンブリッジ大学図書館でアーカイブズの調査とその分析を実施することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、引き続きグリニッジ天文台に関する史料を分析する。夏期には大英図書館において、インドの各天文台に関連する一次史料の調査と分析を行う。 まずは時間通知に関する技術の移転の実態を究明する。どのような装置が主にロンドンから植民地に移植され、その過程にグリニッジ天文台がいかにして関与したかを調査する。次に、このような技術移転を可能にする要因として、トランスナショナルな科学・知識・技術の移動を、出版物・専門家・装置・書簡などの移動に焦点を当てて分析する。そして本国の科学機器・時計メーカーの役割を検討することで、各植民地で利用されていた技術の諸相に具体的に迫りたい。
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Causes of Carryover |
本研究に関連する複数の図書を購入する予定があったが、その出版が予定よりも遅れたため、翌年度の物品費で購入することに変更する。
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