2022 Fiscal Year Research-status Report
Reforming Time in the British Empire
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19K01085
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石橋 悠人 中央大学, 文学部, 教授 (90724196)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グリニッジ天文台 / 経度 / 標準時 / 文書管理 / アーカイブズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には、まず「イギリス帝国とグリニッジ世界標準時の形成-19世紀末における本初子午線と時間帯の受容を中心に」『西洋史研究』51号を出版することができた。この論文では、19世紀末に本国と植民地の科学技術者たちが、グリニッジ本初子午線の受容にどのように関与したかを究明した。まず国際子午線会議(1884年)の前後の時期を中心に、本初子午線の選択に関するイギリス政府の対応を論じた。政府のなかでこの問題への対処を迫られたのは科学技芸省であるため、そこに設けられた専門委員会の議事録、書簡、報告書を分析した。次にこの委員会がワシントン国際会議の決議を帝国内で実効化するために採った施策に焦点を当てた。とくに本国から植民地に向けて発せられた提言を受けて、帝国内でグリニッジ基準の時間制度が次第に敷かれていく経緯を再構成した。 つぎに、「グリニッジ天文台における文書管理の技法-ジョージ・エアリとアーカイブスの形成」縄田雄二・小山憲司編『グローバル文化史の試み』を出版することできた。この論文では、19世紀のグリニッジ天文台における文書管理の技術の発展を考察している。19世紀中葉に、天文台では観測記録、公文書、書簡、図書・論文を適切に分類・整理・収蔵する仕組みが整えられ、現在まで続くグリニッジ天文台アーカイブズの原型が生み出された。本論文では、天文台長ジョージ・エアリがどのような意図でこのような文書の整理を行い、その文書をどのように活用したかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は科研課題に関する2編の論考を出版することができたことから、概ね順調に伸展していると判断した。また、オーストラリアのメルボルンにおいて、メルボルン天文台に関する一次史料の調査を実施することでき、次年度にその成果をまとめる予定である。そのため、科研の計画全体の進捗もおおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度にあたるため、本科研の成果を単著としてまとめることを優先的な課題として行いたい。
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Causes of Carryover |
感染症の世界的な流行により、海外での史料調査を実施することができなかったため、助成金をすべて使用することができなかった。次年度には、主に海外調査や英文論文の校閲などの費用に、助成金を使用する。
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