2019 Fiscal Year Research-status Report
Holocaust trials in the Federal Republic of Germany during the 1950s and 60s
Project/Area Number |
19K01088
|
Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
武井 彩佳 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (40409579)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ドイツ連邦共和国 / ナチズム / ホロコースト / 裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、西ドイツにおけるナチ犯罪に関する裁判資料のシリーズ、(C.F. Ruetter/Dick de Mildt (Hg.), Justiz und NS-Verbrechen: Sammlung deutscher Strafurteile Wegen Nationalsozialistischer Toettungsverbrechen 1945-1999, Amsterdam: Amsterdam UP, 2001)を用い、判例を分類・整理し、リスト化して記録する計画を立てた。これにより、どのような法解釈が積み上げられて、「人道に対する罪」ではなく、これまでの刑法規程でホロコースト犯罪を裁くようになったのか、その流れを捉えられることができると考えた。 現状としては、前述の判例集を所蔵する図書館が関東では数カ所しかなく、またコロナウイルスの影響でこうした大学図書館が2,3月と閉館となったため、予定したほど分析を進めることができなかった。また進捗状況に関する箇所でも言及するように、ミュンヘンのドイツ現代史研究所やルートヴィヒスブルクの連邦文書館での現地調査ができなかったことにより、実際の捜査史料や「ナチ犯罪追及センター」の史料も検証できていない。 このため本年度は、主にオンラインDBの判例からホロコースト裁判の展開を追った。その結果、ドイツ国境外でなされた犯罪の訴追においては、冷戦で東欧諸国と捜査の連携が阻まれたことにより、領域的な管轄の問題が大きな障害となってきたことが読み取れた。また、大量殺害により生存者がほとんど存在しないケースも少なくなかったため、証人を見つけることの困難さが立件を難しくしていたことも理解された。 全体としては、ホロコースト裁判の大きな流れを捉えるにとどまっている状況である。今後は個別事例ごとに分析できるように、第一次史料の収集を進めたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2月/3月にミュンヘンの現代史研究所において、当研究所が近年進めてきた連邦共和国による司法訴追に関する史料の整理状況を確認し、ルートヴィヒスブルクの連邦文書館の史料との重複を調査する予定であったが、コロナウイルス問題により訪独を断念せざるを得なかった。このため、海外出張旅費が執行できず、大きな繰り越しが発生した。本年度はこの現地調査を研究を軌道に乗せる上で重要なものと位置づけていたため、その意味では研究の進捗は遅れているといわざるを得ない。 また、現地調査の準備段階では、アムステルダム大学が出版するJustiz und NS-Verbrechenというナチ犯罪に関する戦後の判例集の読み込みを進める予定であった。しかし関東圏でこのシリーズを最初の号から所蔵する図書館が2箇所しかなく、アクセスも比較的難しいことが判明した。これにくわえて2,3月はこれらの図書館も臨時閉館となった。このため、むしろ法学系のオンラインDBで戦後初期の判例とコメンタール等を収集しているものの、アウシュヴィッツ裁判のように世間の耳目を集めたもの以外はDBに収録されていない。DBは個別の裁判事例をすべて網羅するわけではないゆえ、比較的マイナーとされる戦争犯罪裁判に関しては、紙の第一次史料を探さざるを得ない。これが現状において史料収集の問題点となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパでのコロナウイルスの拡大状況にもよるが、可能となった段階で速やかに令和元年度に実施できなかったミュンヘン現代史研究所とルートヴィヒスブルク連邦文書館での史料収集を行う予定である。ただし、検疫で数週間隔離状態に置かれる等の条件が課されて調査開始に必要以上に時間がかかる場合は、アムステルダム大学が出版しているJustiz und NS-Verbrechenの判例集のオンライン版のアクセス権を購入し、全体的な流れを把握する。このDBは比較的高額ではあるが、オンラインであるゆえに判例の参照機能が効率的に利用できる。ただし、裁判の判決に至るまでの内部資料や検察と捜査機関のやり取りについては、やはり紙の史料を見ることなしには分析できないため、あくまでも現地調査を本年度の主たる計画として維持しつつ、利用可能な史料の読み込みを進める。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で、予定していたドイツへの海外出張旅費を執行することができなかった。これは次年度に使用予定とするが、入国や短滞在が困難な状況が継続する場合は、裁判史料のDBを購入することで、物品費として執行する予定である。ドイツでの史料収集が困難な場合は、可能な他国での収集へと切り替えることも視野に入れている。ただし、次年度においても海外出張旅費を計上しているため、どのタイミングでどの国に行くことができるかは、状況次第となる。 さらに、2,3月はほとんどの大学図書館が閉鎖されたため、他大図書館での史料収集もできず、コピー代の支払い等も発生しなかったため、繰越額が増えた。
|
Research Products
(2 results)