近世ベルリンにみるダイヴァーシティー社会と国家～ユグノー・選帝侯・地元住民の対話

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K01090
• Research Institution: Bukkyo University
• Principal Investigator: 塚本 栄美子 佛教大学, 歴史学部, 准教授 (90283704)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 近世ベルリン / ユグノー / 多様性

Outline of Annual Research Achievements

報告者がすでに入手していた、1690年から99年の「ベルリン・フランス人教区の陳情書と選帝侯の回答書並びにドイツ系住民の意見書」について、昨年度取り組んだ1692年までのものから引き続き以降の年度の分を読解・分析を行った。そうすることで、当該期のベルリンにおいて、フランス系改革派信仰難民の定住には依然として選帝侯への依存度が高かったことが確認できた。しかしながら、昨年度分析をした最初期に比べると陳情書の件数は少なくなり、内容も形式化してきていた。
同種の史料について、もう少し長期的に史料を収集・調査すれば、微妙ではあるかもしれないが、信仰難民・選帝侯・地元民の三者の相互依存関係に質的変化が確認できるのではないかと考えている。というのも、手元にある10年間分でも後半期に形式化される案件がみられる一方で、それまでになかった性質の要望が散見されるようになるからである。
したがって今後は、選帝侯が、ベルリン社会の中で信仰難民の独自性を認めつつ地元民との共生を促す際、その役割を変質させていったことに留意しながら研究を進めていきたい。
しかしながら、こうした新たな見通しを持つに至るも、目下のところコロナ禍にあり、渡独による史料調査が困難な状況にある。致し方ない状況であるが、当面は研究成果の多い選帝侯と地元民との関連について日本でも入手できる文献で従来の研究の見直しを図り、すでに分かっている範囲で信仰難民も視野に入れたうえでの近世ベルリン社会のありようについて論考をまとめたい。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

概要にも記したが、2019年度末以降の新型コロナ感染症の世界的拡大により渡独が困難であり、新規に史料調査ができない状況にあるため。

Strategy for Future Research Activity

概要に記した長期的な考察課題に取り組むためには、18世紀に入ってからの史料の収集が必須である。しかしながら、現在の状況では新型コロナ感染症の終息についてめどがたっていない。したがって当面は、ユグノー側が入植初期の記憶を歴史化した出版物を収集し、彼らの置かれていた状況を多角的に確認するとともに、地元民についての研究も進めたい。そうした作業の中で、課題をより明確にし、史料調査が可能になる時に備えたい。

Causes of Carryover

本研究課題の予算費目において大半を占めていたのは、史料調査のための渡航費および滞在費であった。しかしながら、新型コロナ感染症の世界的流行によって現時点では一度も渡独できていない。事態の改善がいつ見込めるのか予測がつかない一方で、研究期間はまだ残されているので、報告者としては渡独による史料調査のためにつけた予算について、別の費目に変更せず、ぎりぎりまで様子をみたいと考える。
また、2020年度の前半はドイツとの輸送についても一時ストップすることがあった。したがって、書籍の発注についても控えていたため、極端に予算の執行状況が悪い結果となってしまった。この点については、現時点の貨物流通も必ずしも円滑ではないものの、滞る事態はなくなってきているので、2021年度の執行は問題なく進められると考える。