2021 Fiscal Year Research-status Report
中部山岳地における縄文大型マメの継続性に関する研究
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19K01099
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
会田 進 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (40581757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須 浩郎 岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (60390704)
佐々木 由香 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 特任准教授 (70642057)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本考古学 / 植物考古学 / 縄文農耕論 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)縄文時代古段階の土器種実圧痕マメ類検出調査:縄文時代草創期~早期の木曽開田高原遺跡群及び静岡県沼津市葛原沢遺跡、埼玉県寿能遺跡出土土器の種実圧痕調査を行ったが確実なマメ類圧痕の検出はできなかった。 (2)ドングリ圧痕土器の調査:縄文時代前期の秋田県上ノ山Ⅱ遺跡出土土器に遺るドングリ圧痕について実調した。土器の器壁を貫通する混入は故意に混入させた、つまり土器成形後に埋め込まない限りあり得ない在り方であり、種実類混入の意味を考える上に重要な資料である。器壁を貫通する例や胎土に潜在する例等圧痕の在り方を十分に観察することができた。 (3) 岡谷市内遺跡出土土器付着炭化物の分析:東京大学米田穣氏から、縄文土器付着炭化物について資料提供の依頼を受け、協同研究として約200個体の土器から炭化物を採取。窒素同位体比分析、残存脂質分析、残存デンプン分析を行った。炭化物の成因を分析し、その結果と土器の形態及び容量との比較を試みることができた。その中で大小の土器の大きさの差の中に炭化物の内面付着成因に相違があることが見えてきた。まだ全点終了していないので結論は推定段階であるが、大型土器と小型土器では煮沸するものが異なり、機能の上に使い分けがあるようである。この機能上の差異についてデータ整理を進めている。 (4)長野県永明中学校遺跡出土の弥生時代住居址炉埋土のフローテーション:2021年度に行われた茅野市永明中学校遺跡発掘調査において、出土した弥生時代住居址31棟の炉内埋土をフローテーションし、炭化種実の検出を行った。このうち炭化物の精査(選別)を終了したのは5棟であるが、すべての住居址から炭化コメが検出された。そのほかに1棟からコムギ?マメ?を検出し、現在最終同定を進めている。マメ類、雑穀類が検出されれば、縄文時代晩期以降の雑穀と関連性を検討できるデータとなるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染が大きな理由である。長野県内は感染者が少ないとはいえ人口の割合から見ると異常に多い状況であり、また松本・長野地域とともに諏訪地域にも集団感染が拡大していたため、炭化種実の分析作業や土器種実圧痕調査を完了させることができなかった。 また、研究分担者においては、まとめのための資料整理・検討やシンポジウム準備の打ち合わせなど、資料作成の研究出張が進めにくい状況にあり、不十分な状況で、予定したシンポジウムが開催できずに終わったことによる。 科研最終年度の延長を申請して、2022年度にまとめを付ける計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、これまで採取した土器種実圧痕レプリカについては、その中からマメ類に同定されているすべてのレプリカの計測値と写真を整理し、データ化する。また2021年度に分析作業を完遂できなかった縄文土器付着炭化物の分析は、その母体土器の型式分類と形態分類を終了させ、傾向を読み取る。土器の形態別機能が明らかにできるであろう。縄文時代後・晩期の器形細分化など生活様態の変化を中期に萌芽を見ることができるかどうか、分析結果を期待したい。さらに植物質食糧、特にマメ類の煮沸が分析結果としてデータが取れればなお大きな成果である。フローテーションを進めている弥生時代炭化種実の精査は、できるだけ早く炭化コメと炭化マメの検出を終了させ、縄文時代のマメと比較研究ができるようにしたい。 また、コロナ感染が現在の状況のまま悪化しなければ、これまでの科研研究の成果を問うために、縄文時代研究を専門的に進めている考古学研究者による、確実に存在する縄文のマメをどのように捉えるか。野生のマメの採取か、管理の後の収穫か、栽培か、またその前提として食料としてどの程度に食していたかについて意見交換するシンポジウムを開催したい。それによって当研究グループの研究成果をまとめ、研究の一区切りとする計画である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大による研究活動の縮小が要因である。土器種実圧痕調査の研究出張ができなかったこと、また、研究のまとめを行う打ち合わせ、資料分析検討の出張会議、総括的シンポジウムが開催できなかったことによる。 2021年度は、これまでの研究成果をデータ化し、総括のシンポジウムを開催する計画である。
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