2020 Fiscal Year Research-status Report
古代エジプト国家形成期における儀礼と権力に関する考古学研究
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19K01100
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
馬場 匡浩 早稲田大学, 総合人文科学研究センター, 招聘研究員 (00386583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古代エジプト / 国家形成 / 権力形成 / 儀礼祭祀 |
Outline of Annual Research Achievements |
権力形成に関する近年の研究では、儀礼祭祀によるイデオロギー操作がエリートの権力と地位の維持向上において重要とされる。古代エジプトでは、ファラオを 析出するに至る国家形成期にこうした権力形成があったと考えられるが、資料不足によりこれまで十分な議論ができなかった。しかし、文明形成期のヒエラコン ポリス遺跡にて近年、エリートの儀礼空間と考えられる大型構造物と加熱調理場が磁気探査によって新たに発見され、イデオロギー操作を考古学的に研究しうる 資料が得られた。そこで本研究では、これら遺構の発掘調査を継続させ、儀礼行為の具体的内容を明らかにし、権力の維持・強化における儀礼の機能について考 察することを目的とする。 2年目となる本年度は、継続してヒエラコンポリス遺跡での発掘調査を予定していたが、新型コロナの影響で実施することができなかった。そこで、権力形成と儀礼祭祀の関係に関する既往研究の収集と昨年度発掘調査の整理・考察を行った。後者に関しては、儀礼祭祀空間と思われるエリート墓地北端にて土製人形という特異な遺物が集中して出土したが、類例比較によると、指まで細かく表現したものは、ボストン美術館のBasileia出土とブルックリン美術館のMamariya出土の例しかなく、いずれもヒエラコンポリス遺跡の近郊に位置する。よって、詳細に表現された人物像はヒエラコンポリスの特徴と考えられる。また、黒頂磨研小型ビーカーと赤色磨研小型ボウルが80%を占める土器集中が検出されたが、同一器形を用いた植物学的分析をスタンフォード大学と共同研究を行い、ビール残滓の検出に成功した。恐らくここでは、人形像とビールの供物奉納またはそれらを用いた儀礼祭祀が執り行われていたのであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、1:儀礼行為に関連する遺構の発掘、2:出土する考古遺物・動植物遺存体の分析から遺構の性格・機能を把握、3:権力の維持・強化における儀礼の機能考察、この3つの作業項目を掲げている。本年度は1の発掘を実施することができなかったが、2の分析にて大きな成果を得ることができた。なお当該分析の成果はJournal of Anthropological Archaeologyに投稿し、査読受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、エジプト政府からもすでに調査権認可を受けており、ヒエラコンポリス遺跡における儀礼祭祀関連遺構の発掘調査を再開したい。また本年度の開催が延期された、国家形成期に特化した国際学会(Egypt at its Origins 7 at Paris)にて、発掘成果を速報として報告する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で発掘調査が実施できなかったため。次年度の発掘費用として使用する予定。
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[Journal Article] Mashes to Mashes, Crust to Crust. Presenting a novel microstructural marker for malting in the archaeological record2020
Author(s)
Heiss, A.G., Azorin, M.B., Antolin, F., Kubiak-Martens, L., Marinova, E., Arendt, E.K., Biliaderis, C.G., Kretschmer, H., Lazaridou, A., Stika, H.P., Zarnkow, M., Baba, M., Bleicher, N., Cialowicz, K.M., Chlodnicki, M., Matuschik, I., Schlichtherle, H. and Valamoti, S.M.
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: 15
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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