2021 Fiscal Year Research-status Report
有文当て具痕跡から窺える律令国家成立前後の地方の主体性と対朝鮮半島交流の研究
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19K01106
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Research Institution | Administrative Agency for Osaka City Museums |
Principal Investigator |
寺井 誠 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 係長 (60344371)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 考古学 / タタキ技法 / 当て具 / 有文当て具痕跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症が収まらなかったことから、研究活動が大幅に制限され、韓国に調査に行くこともできなかった。本来であれば本年度が最終年度であり、研究成果報告書を刊行する予定であったが、必要な資料調査が行えなかったため、1年間延長申請を行い、認可された。 緊急事態宣言が解除され、まん延防止等重点措置に移行した7~9月には大阪府下での資料調査を進め、堺市陶邑窯跡群の6~8世紀の須恵器、高槻市宮田遺跡など当て具痕跡をもつ8~9世紀の土師器の調査を進めた。陶邑の須恵器については、限られた資料ではあったものの、当て具痕跡の同心円文が木目の圧痕と交わる事例は確認できなかったことから、同心円文は木目(年輪)に由来するものと考えられる。 大阪府でまん延防止等重点措置が10~12月に解除された期間には、三重県、福岡県大野城市、岐阜県各務原市・岐阜市で調査を実施した。三重県埋蔵文化財センターでは伊賀国府推定地で出土した古墳時代後期の木製無文当て具を調査した。大野城市では牛頸窯跡群や乙金遺跡群出土の須恵器・土師器・軟質系土器を調査し、技法の比較検討を行った。各務原市・岐阜市では美濃須衛窯跡群出土の土製の有文当て具及び須恵器の調査を行い、土製有文当て具に由来する当て具痕跡の探索を行った。 なお、新潟県の報告書で8~9世紀の須恵器に格子文・平行文当て具痕跡があることを知り、調査を計画したが、感染拡大により実施できなかった。また、前年度より検討していた愛媛県内での当て具の調査も感染拡大により日程の調整がつかず、次年度に延期することになった。 研究成果としては2019年度の韓国での調査を基にした「当て具痕跡を基にした統一新羅からの搬入土器認定のための試論」(『大阪歴史博物館研究紀要』第20号)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、日本国内の資料を調査したうえで、韓国の当て具・当て具痕跡の調査を進め、比較検討することがもっとも大きな課題であるものの、後者の調査がまったくできないのは大きな痛手である。加えて2021年度で規制が解除されていたのが10~12月のみであり、国内調査についても限定され、計画していた愛媛県、新潟県での調査は断念した。ただ、韓国文化財庁や日本の報告書リポジトリを活用するなどして情報収集を行い、各地での様相を概ね把握することができた。 なお、本来であれば本年度が最終年度であったが、研究の遅れのため、1年延長を申請し、認可された。
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Strategy for Future Research Activity |
1年延長の2022年度については、新型コロナウイルス感染症が収まらない可能性が高いため、韓国での調査は断念し、国内での実物確認調査と、研究成果報告書の作成に重点を置きたいと思う。 実物調査では、愛媛県では久米窪田Ⅱ遺跡(松山市)の木製同心円文当て具、新潟県では滝寺窯跡群(上越市)などで出土した平行文・格子文当て具の須恵器の調査を計画している。 年度末に4年間の研究蓄積を基に、100ページ程度の研究成果報告書を刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大により、予定していた実物調査が実施できなかったことによる。
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