2022 Fiscal Year Annual Research Report
石造物からみた中世寺院の求心性と情報発信力に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19K01107
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
佐藤 亜聖 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (40321947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
先山 徹 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 客員教授 (20244692)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 石造物 / 高野山 / 町石 / 花崗岩 / 寺院 / 技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中世寺院がもつ求心性と情報発信力・拡散力を、主に石造物を通して検討することを目的とした。このための具体的な研究方法として、①高野山町石の鎌倉期のものについての全点実測図作成、②高野山町石についての岩石学的分析、③高野山町石造営の技術的背景の検討、④高野山町石採石地の推定、⑤畿内各地の初発期花崗岩製石造物の調査、などを行った。 ①~③については慈尊院180町石から大門までの136本、御所芝後嵯峨天皇供養塔を含む17本、高野山霊宝館および高野町教育委員会所蔵残欠3点、合計156本の実測調査を行い、併せて石材の帯磁率と有色鉱物含有量による石材のグルーピングを行った。まず岩石については砂岩製の1基(奥の院33町石)をのぞいてすべて花崗岩で、A~Hの8群の石材が使用されており、このうち鎌倉期の町石にはA~Dの4種が使用されていることが判明した。それぞれの石材原産地については六甲花崗岩、近畿地方の領家帯花押岩と推定されたが、領家帯内部の産地比定にはなお課題が残る。 次に形態的観察からは主に空風輪の形状から11小類に部類できたが、小差異を習熟度と捉えると大きくA・Bの2群にまとめることができる。これらは石工集団の差異と認識でき、高野山町石造立には出自の異なる2集団が関わったと考えた。そしてそのルーツとして整美な形状のA群を大和、B群を京・近江系と推定した。これら形態的分類と石材グループは有意な一致を示さず、このことから高野山町石の造営は各地から集められた石材を、高野山周辺の集積地で加工、完成させたと推定できる。 このほか、畿内の初期花崗岩関石造物の調査として大阪府箕面市勝尾寺町石および五輪塔(1247年造営か)の実測、石材鑑定調査を行った。 これら一連の調査成果をまとめ、最終年度に『高野山町石実測調査報告書』として刊行した。
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Research Products
(6 results)