2022 Fiscal Year Research-status Report
胎土分析から復元する縄文時代中期の土器づくりシステム
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19K01117
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
水沢 教子 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (10792799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 由克 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (10737745)
眞島 英壽 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (60526804) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 栃倉式土器 / 非破壊カウント法 / 偏光顕微鏡観察 / 胎土分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、縄文時代中期の具体的な土器作りシステムの解明を目指す基礎的な研究である。仮説として1土器型式内に複数の土器製作拠点がある可能性を検討している。それを証明する第一歩として、一定領域の遺跡を抽出し、ある土器型式の胎土が遺跡内外を通して共通する傾向が捉えられるかどうかの検証を試みている。また、その一方で特定の器種ないし型式の土器が、広域に移動している場合、そのような土器には、各集落で一般的な胎土とは異なる特別な胎土が確認されることになろう。 そこで、栃倉式土器の胎土における遺跡内外の共通性の有無を順に検討してきたが、令和4年度には次の大きく2点の研究成果があげられる。まず1点目は中野市千田遺跡出土土器の非破壊カウント結果と偏光顕微鏡観察結果の対比を行ったことである。その結果、栃倉式土器は古段階・新段階ともに岩石では流紋岩、鉱物では石英を含むものが多く、胎土が定型化しているが、栃倉式以前の胎土は土器ごとの差異が大きく、搬入品を含む可能性が高いことを指摘できた。また、非破壊カウントで偏光顕微鏡観察を補い、個別具体的な岩石に置き換える際には、ある程度の変換の必要性が認識された。 成果の2点目は、千曲川沿いにさらに下った左岸の栄村ひんご遺跡と同じく左岸の新潟県津南町出土土器の調査を行ったことである。ひんご遺跡では、報告書掲載土器がすべて村宝になっていることから、栃倉式古段階を中心に非掲載資料を実見し、分析予定資料を抽出した。津南町出土土器については栃倉式古段階の土坑出土一括資料を仮抽出した。これらのうち、前者では土器を借用して分析に入り、現在非破壊カウントを進めている。その後、薄片化により、砂部分の定量分析を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、長時間の調査を控えたことも一因であるが、本務の遅れから休日もその計画策定等を行ったこと等で、研究に費やせる時間が相対的に低下し、結果として遅れを招いた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の3点について、優先順(①、②、③の順)に分析を進める。①栄村ひんご遺跡出土栃倉式土器の偏光顕微鏡観察による岩石・鉱物の定量化。②津南町内出土土器から栃倉式土器を抽出、資料化、薄片作成と胎土分析および周辺地質の調査③中信地域の土器胎土の検討・把握と粘土との対比。栃倉式並行期の土器抽出と分析 研究対象については、当初中期中葉と後葉を考えていたが、まずは中期後葉栃倉式に絞り込んで集中して分析を進めたい。
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Causes of Carryover |
予定していた薄片作成が進まなかったことが、次年度使用額が増加した大きな要因。令和5年度は、薄片作成とそれに係る旅費を中心に使用する予定。
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