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2022 Fiscal Year Research-status Report

東北北部の縄文時代人口の推計および人口変動と祭祀や墓制の変化との関連性分析

Research Project

Project/Area Number 19K01118
Research InstitutionRitsumeikan University

Principal Investigator

中村 大  立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 准教授 (50296787)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2024-03-31
Keywords東北北部 / 縄文時代 / 人口変動 / 儀礼(祭祀・墓制) / レジリエンスモデル / 圏論 / 共同体 / 共異体
Outline of Annual Research Achievements

これまでの研究により、東北北部の縄文時代には6回の大きな人口変動期があり、それと連動して儀礼(祭祀・墓制)に大きな変化が生じていたことが明らかになりつつある。それとともに、昨年度からは人口と儀礼が連動するメカニズムを説明し儀礼の機能に新たな解釈を提示する「レジリエンスモデル」の構築を進めてきた。今年度は、モデルの改良を実施するとともに、縄文時代の儀礼における社会のレジリエンスの発現を考古データの傾向やパターンから捉えるための分析手法のアップデートも進めた。
本研究のレジリエンスモデルでは、レジリエンスを「システムが想定内や想定外のいずれの状況でも機能し続ける能力」としている。それは機能を維持し存続できる「強さ」と、環境の変化に対応できる「しなやかさ」である。社会の強さは組織力と情報共有が生みだす共同体であり、しなやかさはメンバーの多様性と想像力で緩やかに連帯する共異体である。社会は一般的に両者の性質を併せ持つ。共同体による構造の維持と共異体による構造の革新を適切に使い分けることで、地域社会のレジリエンスが発揮され社会が持続する。
そして、儀礼は社会がもつ共同体と共異体の両側面を参加者に理解させ、両者を調和させる場として重要である。儀礼空間には社会の秩序、規範、価値観などが示され構造的な強さを参加者に実感させる。こうした空間の構造化現象としては、環状列石や集団墓地にみられる列状、同心円状などの配列や分節化、土手や溝による区画などが挙げられる。一方、配石の石組みや墓の副葬品などのバリエーションやそれらの大幅な変更は、社会が有する選択肢の豊かさや潜在する革新性の現れと理解できる。
レジリエンスモデルの導入により、縄文時代の儀礼空間にみられる規則性と多様性を統合的に説明し、人口動態と儀礼が連動する仕組みを提示することが可能になった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

令和4年度は本務の都合により研究時間の確保が困難な状況であった。さらに、新型コロナウィルス感染症の拡大によりデータ収集調査を中止せざるを得なかった。一方、儀礼活動を人口変動に対する社会的対応として説明するためのレジリエンスモデルについては、改良が進んだ。
本研究の大きな目的である縄文時代の人口推定については、計算方法の改良により妥当性の高い推定が可能になってきた。住居跡数にもとづく推計では発見バイアス(調査の偶然性)により人口を過少に推定する場合があることが明らかになり、そのバイアスがより小さい遺跡数の変動データを組み合わせた推定方法を開発した。これは、推定が比較的容易な1住居の居住人数と、過少推定問題を回避できる遺跡数データの両者を融合させた新たな人口推定手法である。また、人口変動の速度と大きさを適切に評価するため時系列データ(100年幅の時間ブロック毎の住居跡数や遺跡数)の作成については、東北北部の土器編年と暦年代を整理し、縄文早期から晩期(10500-2300calBP)まで100年幅の時間ブロックに対応する土器型式の確率分布データを作成した。
もう一つの目的である人口変動と儀礼変化の連動性分析については、人口や気候などの人文・自然環境と儀礼などの社会生活実践の相互作用関係を整理した「レジリエンスモデル」を構築した。これは、社会が諸環境に適応するために経済(実行力)、文化(学習力)、共同体(組織力)、共異体(想像力)の諸活動を連携させてレジリエンス(4能力の総合としての強さとしなやかさ)を創発させる仕組みをモデル化している。これにより人口と儀礼の関係に新たな解釈を提示できる。
以上のとおり、成果は上げつつもスケジュールに遅延が生じているため、この判断とする。

Strategy for Future Research Activity

昨年度から研究の実施方法を変更し、既に収集したデータを使いながら人口推定の計算手法および人口と儀礼の連動性分析のためのレジリエンスモデルの改良を先行して進めた。それにより分析に必要なデータの項目や精度を絞り込み、データ収集調査の再開後に効率的な作業を行うことができるようにしてきた。令和5年度は新型コロナウィルス感染症の問題は収束に向かう見通しであり、住居跡数や土器型式別遺跡数、儀礼(祭祀・墓制)に関連する遺構・遺物のデータ作成に重点を置く。計算方法と分析モデルは整備が進んでいるため、データが集まれば迅速に解析と解釈を行うことが可能である。なお、新型コロナウィルス感染症が再拡大し出張調査に影響が出た場合でも、それまでに収集したデータで研究成果をまとめる。そうした可能性も考慮に入れ、①陸奥湾沿岸部、②馬淵川・新井田川流域、③米代川流域を重点地域とし優先的にデータ整備を進め、成果の確保を図る。

Causes of Carryover

本務の都合と新型コロナウィルス感染症の拡大により人口推定方法とレジリエンスモデルの改良作業に重点を置いたため、データ整備作業のスケジュールに変更が生じた。そのため旅費およびデータ整理作業補助のための謝金が次年度使用となった。これらについては令和5年度に執行する。また、令和4年度に研究発表を行った国際学会は新型コロナウィルス感染症のリスクを考慮しオンライン参加となった。それに関連する旅費については、成果を広く公開し、国際化を推進するためのウェブサイト構築費や英文校正費に充てる。
物品費については、長年使用している液晶モニタの更新を予定していたが今年度も使用に耐えたため、機器の状態を監視しながら令和5年度の購入予定とした。

Remarks

現在、ウェブサイト構成の大幅な更新に着手したばかりであるが、本研究の成果報告の公開に活用していく予定である。

  • Research Products

    (6 results)

All 2023 2022 Other

All Journal Article (3 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] デザインにおける考古学のレジリエンスモデル-アーキオロジカル・プロトタイピングの可能性-2023

    • Author(s)
      中村大・後藤智
    • Journal Title

      デザイン科学研究

      Volume: Vol.2 Pages: 77-103

    • Open Access
  • [Journal Article] 圏論を応用した社会レジリエンスモデルの構築について2023

    • Author(s)
      中村大
    • Journal Title

      環太平洋文明研究

      Volume: 第7号 Pages: 50-65

  • [Journal Article] 圏論を応用した土器の実体化過程モデル構築の試み2022

    • Author(s)
      中村大
    • Journal Title

      モノ・構造・社会の考古学-今福利恵博士追悼論文集-

      Volume: なし Pages: 97-104

  • [Presentation] 縄文時代の儀礼祭祀研究と文明レジリエンスモデル2022

    • Author(s)
      中村大
    • Organizer
      日本考古学協会第88回総会
  • [Presentation] Demographic Shifts and Emergence of Ritual Landscapes during the Jomon Period in Northern Japan, 6000 to 2500 cal BP2022

    • Author(s)
      Oki Nakamura
    • Organizer
      The Nineth World Archaeological Congress
    • Int'l Joint Research
  • [Remarks] 中村大考古学研究アーカイブ

    • URL

      https://okinakamura.jp/

URL: 

Published: 2023-12-25  

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