2019 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける木質文化財群の用材観のデータベース化と応用
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19K01124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田鶴 寿弥子 (水野寿弥子) 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (30609920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 樹種識別 / 用材観 / 東アジアの文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本文化を語る上で欠かすことのできない神道と茶道のなかでも特に重要な意味をもつものの、科学的視点からの研究が最も遅れている文化財群に注目してきた。この2群は、文化的に一見かけ離れた文物であるように思われるが美術史研究においてその成立や内在する精神的背景などの点で非常に重要な意味をもつ文物であり、建築史や彫刻史を語る上で欠かせないものである。 これらの用材観の解明に向けて従来の樹種識別手法に加えて申請者らが開拓してきた非破壊の樹種識別手法(μCTや近赤外分光法など)などを駆使、発展させることで用材観の大規 模なデータベースを構築し、美術史、宗教史、建築史に欠けてきた科学的知見の獲得を進めてきている。本年度は東アジアの木彫像の調査に関して、アメリカのボストン美術館、クリーブランド美術館に訪問し、実際に学芸員やコンサベーターと共に木彫像由来の試料を採取し、樹種調査を行い論文作成を進めているほか、茶室建築における樹種調査では、国宝如庵をはじめとして、裏千家住宅、等持院清漣亭についての論文を作成済みであり、(現場担当者の確認待ち)順調にデータの蓄積を進めている。今年度は、茶室と木と題したシンポジウムを主催するなど、茶室に関連した研究の進展に尽力したが、シンポジウムについてはコロナの感染予防もあり開催中止となった。現在、論文作成やデータの解析に邁進しているが、来年度調査予定の欧米の美術館や国内の茶室についても、調査にむけて動き出しており、継続した深みのある研究にむけて努力したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東アジアの木彫像の調査においては、ボストン美術館、クリーブランド美術館などに訪問して実際に採取してきた木彫像由来試料の樹種調査が完了して、論文作成を進めているほか、 茶室建築における樹種調査では、国宝如庵をはじめとして、裏千家住宅、等持院清漣亭についての論文を作成済みであり、(現場担当者の確認待ち)おおむね順調にデータを拡充できているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、コロナの影響で国外及び国内における木彫像や茶室、近代和風建築における調査が滞る可能性が高いが例えば各美術館の学芸員やコンサベーターと密接にオンラインでコンタクトを取りながら、試料を採取してもらい、日本へ送ってもらうことで、しのげればと考えている。本年度は、アメリカのみならず、ヨーロッパや台湾での調査を視野に入れており東アジアにおける木彫像の調査に邁進したい。茶室建築については、今年度、武田五一ら近代和風建築の樹種調査に数件かかわることが決定しており、そこで使われている茶室についても対象とするほか、島根県にて現在修復工事が進んでいる文化財指定茶室において調査を進める予定にしている。それぞれの重要なデータは、今後公開していきたいと考えている。また、本年度、出版社と相談中であるが、茶室に関連した書籍の発行を進めている。
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Causes of Carryover |
年度末から始まったコロナにより、予定していた出張や学会発表などすべてキャンセルとなり、次年度使用額になってしまいました。次年度、キャンセルとなっていた海外での調査用の出張などが増えると予想されることから、そちらに使用したいと考えています。
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Research Products
(17 results)