2020 Fiscal Year Research-status Report
Research of the broadcast method for both the person with higher-order brain dysfunction who has difficulty in recognizing speech-sounds and the others who easily understand them
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19K01143
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
三谷 雅純 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 客員教授 (20202343)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高次脳機能障害 / 聴覚失認 / 聴覚情報処理障害 / 情報アクセス / 災害情報 / 多感覚統合 / DAISY/EPUB / 緊急警報信号 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度後半に行っていた「チャイムを添えた言語音による課題」を、言語音も短くし、さらに課題の切れ目に、再度、注意喚起のチャイムが鳴るように工夫した言語音による視聴覚実験を、聴覚失認者に対して2019年度に行った。結果は原著論文としてまとめ、福祉のまちづくり学会の学会誌「福祉のまちづくり研究」に公表した(三谷, 2021)。
ところで聴覚失認者は、非障害者と同様にチャイムを添える時と添えない時で反応に違いがあるのだろうか。そのことを確かめるために、チャイムのない言語音と「視覚刺激と一桁の暗算」の視聴覚実験を行った。結果を以前に実施したチャイムのある場合の結果と比べると、チャイムの有無で非障害者と中・重度障害者に有意な差が認められた。チャイムのある非障害者の最低スコアー以上であれば内容を理解できると仮定すると、チャイムが無い言語音では軽度障害者と中・重度障害者のおよそ25 %が理解できた。さらにチャイムがあれば軽度障害者の50 %以上、中・重度障害者の25 %以上が理解できた。チャイムの添付によってより多くの聴覚失認者が言語的意味を理解できることが確認できた。以上の結果は原著論文として学会誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
聴覚失認者と聴覚失認を自覚していない人に対して、あえてチャイムの添えられていない言語音で視聴覚実験を行い、以前の行ったチャイムを添えた視聴覚実験(三谷, 2019, 2021)と比較することで、聴覚失認者にとってのチャイムの重要性について調べている。 聴覚失認を自覚していない人では、言語音課題の場合、チャイムの添えてある場合と添えていない場合で明らかな差が見られた。しかし、言語音を用いない実験では有意な差が見られなかった。また聴覚失認者では、言語音課題を中・重度障害者に聞いてもらった場合に有意差が見つかったが、軽度障害者に差は見つからなかった。これらのことはヒト独自の言語音に対する反応であり、文字/音声と絵などの視覚刺激が共に出る多感覚統合が効いている可能性がある。 チャイムのある非障害者の最低スコアー以上であれば内容を理解できると仮定すると、① チャイムが無い言語音でも軽度障害者と中・重度障害者のおよそ25 %が理解でき、さらに ② チャイムがあれば軽度障害者の50 %以上、中・重度障害者の25 %以上が理解できたとする成果は公共放送や車内・館内放送に応用する上で有用だが、この実験でわからなかったと回答した聴覚失認者にいかに伝えるのかは、実験で検討した多感覚統合以外の周知方法を探らねばならない。
これらの結果と合わせて、科研費の研究成果公開促進費(社会学)で春風社(横浜市)から『〈障害者〉として社会に参加する』という同じ主旨の論文集を単著で公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の取りまとめをするべき年なので、一連の聴覚失認者に理解できる緊急災害情報の研究(25350404、16K01196、19K01143)、および研究成果公開促進費で出版した『〈障害者〉として社会に参加する』の内容を取りまとめて、総説を書く予定である。
またこれまでの研究に参加してくれた聴覚失認者と研究者を主な対象として、多感覚統合を利用した理解しやすい緊急災害放送を実際に試作し、ワークショップを開いてそれを聞いて確かめてもらう。ただし、Covid-19の感染が収まらない場合には、実際に集まってもらうわけにはいかないし、多くの被験者は高次脳機能障害があってコンピュータの取り扱いは難しいから、代替えとなる何らかの方法を模索しないといけない。
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Causes of Carryover |
新型コロナ・ウイルスの世界的な蔓延のため、旅費のかかる学会や研究会が開催できず、また視聴覚実験も、一部、取り止めざるを得なかった。そのため旅費が予定通りは使えなかった。
人件費・謝金も予定通りは使えなかったものの、障害者団体代表との相談などはできる範囲で継続したので、大きな差額を避けることができた。
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Research Products
(9 results)