2022 Fiscal Year Research-status Report
巨大地震津波後にできる最初の浜堤の形成過程と地下構造の解明
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19K01153
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 晶文 東北学院大学, 教養学部, 教授 (40381149)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 粒度分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,昨年度にGCP(地上基準点)を必要最小限に抑えることができるUAVにより撮影した画像データを用いて,SfMソフトウェアによるオルソモザイク画像および数値表層モデル(DSM)の作成作業を行った。撮影時に取得した検証点を用いて得られた作成予定のオルソモザイク画像およびDSMの精度は,水平方向および垂直方向ともに6 cm未満であり,GCPを多く用いた場合の精度とほぼ同等であることが分かった。また,後浜および浜堤において掘削調査を行い,表層50 cm程度の堆積物を観察するとともに,採取した試料について,弘前大学教育学部にてレーザー粒度分布装置を用いた粒度分析を行った。後浜および浜堤を構成する堆積物上部は主に中粒砂から成り,浜堤の地下には一部に植物根や不明瞭な平行ラミナが観察された。これらは,従来指摘されている砂浜海岸の後浜および砂丘堆積物の特徴と調和的であった。粒度分析により得られた各堆積物(前浜,汀線付近のものを含む)の粒度分布の特性を示す代表値(平均粒径,淘汰度,歪度)を用いて,それぞれが区分できるかを検討した。先行研究により指摘されている,平均粒径と淘汰度,平均粒径と歪度のそれぞれ相関を確認したところ,各堆積物で特に大きな差は無く,粒度分析ではそれぞれを区分することが困難であることが分かった。さらに,一昨年度に東北地理学会秋季学術大会にて発表した,陸域と海域を結合したDEMを用いたGISによる地形解析結果について,学会で受けたコメントをふまえた修正を進めて,2023年度初めに論文投稿を行う準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は,2016年および2021年の高密度点群データの処理作業を同時平行で進めており,今年度も引き続き実施する予定である。また,2022年度に実施予定であったDSMおよびオルソモザイク画像を用いたGIS解析については,一昨年度に完成させた2018年のDSMおよびオルソモザイク画像を含めて,2017年~2019年における植生変化と地形変化の対応関係を引き続き検討する予定である。さらに,2016年および2021年のDSMおよびオルソモザイク画像が完成した場合は,速やかにそれらを加えて,より長期間の植生変化と地形変化の対応関係を検討する。 概要にも示したように,後浜および浜堤で掘削したピットでの観察による堆積相解析や,採取した堆積物を用いた粒度分析により得られた粒度分布の特性を示す代表値(平均粒径,淘汰度,歪度)をふまえた検討を行ったものの,風成堆積物と海成堆積物を区別する明瞭な指標を得ることはできなかった。なお,昨年度に実施予定であった円磨度測定については,勤務地の移転作業により,実体顕微鏡およびカメラのセッティングを行うことができなかった。今年度は,実体顕微鏡等のセッティングを終えた上で,既に採取した試料を用いた円磨度測定を行い,風成堆積物と海成堆積物を区別できるか否かを検討する。 以上の作業を進めつつ,昨年度に計画していた,波浪と海底地形データを用いた海浜堆積物の上限高度の理論計算値(すでに予察的に計算済み)と実測値の比較を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,昨年度に引き続きDSMおよびオルソモザイク画像の作成作業(主に,高密度点群データの除去作業)とGIS解析(地形解析および植生分布変化)を行うとともに,掘削調査により得られた試料を用いた円磨度測定を実施する。今年度は,新型コロナウイルス感染症の影響はこれまでと比べて小さいと予想されるものの,研究補助アルバイト(現地調査補助を含む)が確保できないことも考えられる。そのため,できるだけ研究代表者のみで(あるいは,多くても研究補助者1名とともに)作業・分析ができるように,研究環境を整えるとともに,研究時間を確保する予定である。昨年度は,所属機関の変更による校務内容の変化への対応や,勤務地の移転作業のため,研究環境が大きく変わっただけでなく,研究時間を十分に確保できなかった。そのため,今年度は移転作業の残務(実験室の整備等)をできるだけ早く済ませて研究環境を整えていくとともに,昨年度の経験を活かした各種業務への対応により,研究時間を確保していきたい。これらの方策を行った上で,できるだけ早く上記の作業を進めていく予定であるが,DSMおよびオルソモザイク画像の作成作業が滞った場合は,既に完成しているもののみを用いてGIS解析を行うこととする。全ての作業を終えた後に,海浜堆積物の上限高度の実測値を算出して,既に算出済みの理論計算値との比較を行い,巨大地震後の隆起記録が浜堤構成層に保存される可能性を検証し,本研究全体を完成させる。
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Causes of Carryover |
昨年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,人件費・謝金を使用せず,現地調査回数も少なかったために,旅費も比較的多く残った。これらの残額については,研究代表者が今年度より所属機関を変更したために生じた研究環境の変化により,本研究の遂行に必要不可欠なソフトウェア(Esri社ArcGISおよび画像処理ソフトウェア)のライセンス購入や調査関連消耗品の補充等に使用する予定である。
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