2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of typhoon track from the 18th to the 19th century based on historical weather documents in Japan
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19K01163
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
平野 淳平 帝京大学, 文学部, 准教授 (80567503)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台風経路 / 古日記天候記録 / 気候復元 / 被害分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
1856 年 9 月 23 日-24 日に「安政江戸台風」が江戸西方を通過し、江戸湾で高潮被害が発生した際に、オランダの軍艦 (Medusa 号)が関東東方沖を航行していたことがわかった。Medusa 号の航海日誌を入手し、記録された気象観測データを用いて安政台風上陸時の大きさを推定した。気圧データをもとに「安政江戸台風」の1000hPa半径を推定した結果、1000hPa半径は359㎞であると推定された。気象観測開始以降に「安政江戸台風」と類似した経路を通過した台風と比較した結果、上陸時における「安政江戸台風」の1000hPa半径は、特に大きくないことが明らかになった。2011年-2019年に日本に上陸した台風と比較すると、関東地方に大きな被害をもたらした2019年東日本台風の1000hPa半径は666㎞であり、安政江戸台風の1000hPa半径(359㎞)はこれよりも小さい。本成果は2022年度日本地理学会春季学術大会にて発表した。 安政江戸台風の被害状況(倒壊・損壊家屋数)と歴史天候記録から推定した台風コースを比較した結果、台風による被害は、江戸湾周辺の高潮被害に限定されるものではなく、関東地方広域に及んでいたことが明らかになった。これらの被害状況から判断すると、この台風は広域被害を生んだ「安政東日本台風」と呼ぶべきものであると考えられる。台風コースと被害状況に関する分析結果は、2021年10月に開催された第39回 人文機構シンポジウム「江戸時代の台風コース復元と都市災害- 気候学・考古学・文献史学の協同-」にて報告した。 今後は、1000hPa半径が小さい台風がなぜ広域的な被害を発生させた理由を解明するため、より詳細な解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、コロナ禍の影響により、当初予定していた資料調査・収集を行うことができなかったことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、新たな資料を収集することが困難であったため、すでに収集した歴史天候記録や古気象観測資料をもとに歴史時代の台風経路に関する分析を行い、論文の執筆を進める予定である。特に、長崎(出島)や東京の霊験候簿の気圧観測資料から台風通過にともなう気圧低下を抽出するための解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、コロナ禍の影響により、各地の資料館における歴史天候記録の調査が行えない状況であった。また、学会等は全てオンラインでの開催になり、参加費および旅費も不要になった。以上の理由によって次年度使用額が生じた。
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