2021 Fiscal Year Research-status Report
Crustal movement using the stracture of micro atoll along the Ryukyu Trench
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19K01165
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
前杢 英明 法政大学, 文学部, 教授 (50222287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宍倉 正展 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (00357188)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロアトール / 地殻変動 / 喜界島 / 南西諸島 / 年輪解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、沈み込み型プレート境界に位置する日本列島太平洋側、とりわけ琉球海溝沿岸において、定常的地殻変動と地震性地殻変動との相互関係の具体を解明することによって、完新世海成段丘の形成メカニズムをより精密に解読することを目的としている。これにより、地震や津波の長期発生予測が可能となり、地域の防災・減災に寄与することができれば社会的意義も大きい。琉球海溝に面する南西諸島には、マイクロアトール(微環礁)とよばれる、その頂面の高さがほぼ平均低潮位に規定されるサンゴ群体が生息している。その形状、分布高度および形成年代などを利用して、検潮計では捉えられない過去数100年間以上の古水深の長期変動、すなわち陸地の定常的な隆起・沈降様式を推定し、それがこれまで主に地震性隆起によって説明されてきた完新世海成段丘の形成メカニズムにどのように寄与しているのかを具体的に明らかにする。本年度は6月24日から6月27日に、南西諸島奄美大島の南東沖に位置する喜界島北部嘉鈍海岸において、内湾に成長している直径約3m程度の現生マイクロアトールを、その中央付近から外側に向けて幅10cm、深さ20cm程度の板状の試料を、油圧チェーンソーを用いて連続的に採取した。採取した試料は、CTスキャンなどを利用して堆積構造を可視化し、年輪をカウントするなどの方法により、成長方向や時期・期間などについて分析を進めている。また、8月にもハワイ海岸において、同様な調査を行う予定であったが、covid-19の第5波と重なり、離島の医療状況を考慮して調査を中止した。その後は水温の低下と潮汐条件がよい時期がなく、本年度は試料を採取できなかったため、令和4年度に研究期間を延長申請した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マイクロアトールを採取するためには、海水中で作動するチェーンソーなどの切削機が必要であり、電気やエンジン式は使えないため、油圧式チェーンソーを使用することとした。これにはオイルのコンプレッサーとそれを動かす発電機などを、マイクロアトールから半径10m以内に設置する必要があり、危険なサンゴ礁海岸での重量物の運搬を伴うため、新たに無限軌道の小型クローラーを導入した。潮位の関係で、本年度は6月24日から6月27日に、南西諸島奄美大島の南東沖に位置する喜界島東海岸において、内湾に成長している直径約1m程度のマイクロアトールを、その中央付近から外側に向けて幅10cm、深さ20cm程度の板状の試料を、油圧チェーンソーを用いて連続的に採取することに成功した。採取した試料は、研究分担者の所属機関が所有するCTスキャンなどを利用して堆積構造を可視化し、年輪をカウントするなどの方法により、成長方向や時期・期間などについて分析を進めている。ただし、もう一箇所で試料を採取する予定であったが、covid-19の流行により、8月の調査を中止したため、最終的な分析ができず、令和4年度に研究期間を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は令和3年度に採取できなかった喜界島東部でのマイクロアトールの追加試料採取、および構造が単純でアプローチしやすい北部海岸での追加採取を行い、ここ1000年間くらいの喜界島の相対的地盤運動を明らかにして行く予定である。そのために、令和4年7月には第6回目の調査を計画している。マイクロアトールは測器による検潮観測が行われはじめた19世紀半ば以前の平均潮位の長期的変化を復元できる古潮位計として利用できる自然の産物と考えることができる。IPCC第4次報告書(2007)によると、温暖化によると考えられる平均海面上昇率は、特に1940年代以降加速され、1961-2003年の年平均上昇率は世界平均で1.8±0.5ミリとされている。地殻変動速度をマイクロアトールから導き出すには、温暖化による急激な海面上昇期間より古い時代にさかのぼれる、少なくとも直径が2mを超える、つまり概算で100年以上成長し続けているマイクロアトールを利用する必要がある。放射性炭素年代測定やウラン系列の年代測定、サンゴ群体の切り出しによるサンゴ年輪分析、さらに地元住民への聞き取り調査なども併用して、自然地理学的研究方法により検潮計ではとらえられない過去数100年間以上の古水深の長期変動、すなわち陸地の定常的な地殻変動様式を推定し、それがこれまで主に地震性隆起によって説明されてきた完新世海成段丘の形成メカニズムにどのように具体的に関与しているのかを明らかにし最終年度で考察し、研究を総括する。
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Causes of Carryover |
(理由) covid-19のまん延により、予定していた調査が行えなかったため、次年度に研究期間を延長して行うことにしたため。 (使用計画) 令和3年度に行えなかった喜界島北部、東部での試料採取調査を行う予定である。
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