2023 Fiscal Year Annual Research Report
オーストリアにおける持続可能な都市マネジメントに関する地理学的研究
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19K01170
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川田 力 岡山大学, 教育学域, 教授 (30263643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オーストリア / 都市 / マネジメント / 地理学 / 持続可能 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際的な都市間競争が激化しているヨーロッパの中で、オーストリアにおいては、2000年代以降、国内最大都市のウィーンが都市機能の順調な成長をみせる一方で、中小都市においても都市機能の維持や成長が確認されている。このことを踏まえ、本研究は、オーストリア各都市の都市マネジメント戦略を分析することで、都市の持続可能性に関わる地域的要因を解明することを目的とした。 本年度は、上記の目的を達成するため、オーストリアを訪問し現地調査を実施するとともに、研究のとりまとめを行った。 本年度の現地調査により、オーストリア西部のインスブルック市では、環境・経済・社会の持続可能性を同時かつ公正に実現し、当該地域の環境的、経済的、社会的パフォーマンスを向上させる都市マネジメントが成果をあげていることが判明した。なかでも、社会の持続可能性に関して、年齢、性別、出身地、言語による住民のニーズの違いを都市開発の諸計画の俎上にあげ、多様な社会的背景を有する住民参加を通じて共同生活空間を計画実現し、社会的分離傾向に対抗したソーシャルミックスの促進を図っていることが特筆される。 期間全体の成果として、オーストリア全体の空間計画では、高齢化や移民の増加という社会的課題、温暖化やエネルギー転換といった環境的課題、EU全体の経済状況の変化や産業構造の変化といった経済的課題に対して、競争力強化の側面が後退し、持続可能性の向上の重視が進んでいることが明らかとなった。これに呼応してオーストリアの各都市でも、都市の持続可能性に配慮した都市マネジメントが実施されているが、各都市の都市マネジメント戦略には、各都市のおかれた社会経済的状況に応じて差異があることも判明した。特に、各都市の基幹産業の差異、移民の出身国の差異、都市構造の差異が、都市マネジメント戦略における環境・経済・社会の持続可能性のバランスの取り方に影響している。
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