2019 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会における行政地域システムの構築に向けた基礎的研究
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19K01175
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
美谷 薫 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (50782968)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 市町村 / コミュニティ組織 / 学区 / 行政地域システム / 平成の大合併 / 人口減少社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,当初計画において,福岡県内の市町村を中心として,①支所や出張所といった出先機関の所管区域や行政事務の執行に係る地域区分の実態等について,②コミュニティ組織等の空間的な階層関係とその機能について,③広域行政の活用状況や水平的な市町村間の連携の実態について調査することとしていた。この計画の下で,まず,伝統的な行政地域システムの実態を明らかにする目的から,「平成の大合併」が進展せず,明治期以後の区域変更がない町村も複数存在する福岡県田川地域(田川市・田川郡)を事例に,各市町村での資料収集やヒアリング調査を実施した。 その結果,狭域の市町村が多い事例地域では,①支所等の出先機関の設置は少なく,行政事務執行上の市町村内での地域区分の設定もきわめて限定的であること,②コミュニティ組織については,町村部では区域全体,行政区,組という3層構造が中心であり,中心市の田川市などではこれに校区や旧村域の階層が加わること,また,③行政サービスの供給に係る市町村間の連携は,市郡内で完結する広域行政が中心であることなどが明らかとなった。さらに,「平成の大合併」を経験した町村では,合併前の枠組みが階層として強く残存していること,また,田川地域全域で少子化の進展による学区の再編が相次ぎ,それがコミュニティ組織の編成にも影響を及ぼし得ることなどの結果が得られた。 この成果は,日本地理学会春季学術大会において「福岡県田川地域における行政・公共的団体の地域システム」として公表した(大会中止,要旨集に掲載あり)。 また,成果の一部を,本務校の報告書において,「コミュニティ政策からみた行政・地域・市民の役割分担:田川地域の動向から」(『福岡県における市民セクターの研究―協働のまちづくりの実現可能条件の検討―』福岡県立大学人間社会学部公共社会学科,pp.5-12,2020年3月)として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画を踏まえ,本年度は福岡県田川地域の事例調査を行い,学会発表等の一定の成果を得ることができた。その後,福岡県内の政令指定都市や都市郊外地域の市町,「平成の大合併」を経験した市町村など,多様な属性の市町村の事例調査を実施し,市町村の編成形態に応じた行政地域システムの一定の傾向を把握することで,翌年度の全国調査につなげることを予定していた。しかしながら,学内業務等との兼ね合いに加え,「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大により,上記調査の実施が困難となったことから,「やや遅れている」の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については,「新型コロナウイルス感染症」の感染拡大状況等を見極めながら,まずは今年度予定していた福岡県内市町村の事例調査を実施する予定である。実地調査が難しい場合には,例規や行政計画等の資料調査を重点的に進め,後日,行政へのヒアリング調査等を実施する等の対応を予定している。これとあわせて,福岡県の出先機関の所管区域や行政事務執行上の地域区分についての実態調査を行うことも検討している。 これらの成果を踏まえて,当初計画にある通り,全国の市区町村及び都道府県向けの質問紙を設計して,アンケート調査を実施し,全国的な動向を把握する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,物品費において,機材購入が当初想定よりも安価で実施できたことに加え,「研究実績の概要」及び「現在までの進捗状況」に記載したように,当初計画で予定していた事例調査の実施が困難となったこと,さらに発表予定であった学会の開催が中止となったことなどにより,旅費の未使用が発生したことなどが挙げられる。次年度使用額分については,今年度実施できなかった事例調査のための旅費並びに資料収集に係る経費を中心に充当する方針である。
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Remarks |
「コミュニティ政策からみた行政・地域・市民の役割分担:田川地域の動向から」佐野真由子・吉武由彩・美谷 薫編『福岡県における市民セクターの研究――協働のまちづくりの実現可能条件の検討――』福岡県立大学人間社会学部公共社会学科,pp.5-12,2020年3月
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Research Products
(1 results)