2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K01177
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大城 直樹 明治大学, 文学部, 専任教授 (00274407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 郷土意識 / 社会教育 / 景観 / 地理的表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2019年度は,フィールドである沖縄本島で2回調査することができた。戦前の社会教育によるナショナリズムの涵養が,生活空間のなかでいかに発現するのか,その痕跡を集落景観の中から探し出し,各種資料の探索から,その経緯を洗い出そうと努めた。顕著な事例は,沖縄の固有信仰である御嶽(うたき)に関わるものである。御嶽自体は一つの村落で信仰圏が閉じられるものであるが,青年団によって乃木神社として表象されることもあった。ナショナルなスケールでの神が拝まれたわけである。これに村の長老たちは反感をもった。属する年齢階梯の違いで,また社会教育を通じた社会集団の違いで,カミ観念が相違するという事態が起こったわけである。なおこの時期には,御嶽の外観的な変化も見られた。鳥居の設置や拝殿の神社様式化がその代表例である。これらは沖縄の御嶽信仰には存在しなかったものである。 また,こうした宗教施設の立地する場所を中心に,本来沖縄の在来種ではない桜の植樹も進められた。ヤマザクラはあるものの,ソメイヨシノは気候的に無理があるので,より桃色の色彩の強い台湾寒緋桜が導入された。この梅か桃のような濃い色の桜が,沖縄のムラの杜に見られるようになっていった。その事業の中心も,多くの場合は青年団によるものであった。国頭村奥の集落は,こうした桜の植樹が顕著であった。集落へとつながる道路沿いや集落を取りまく山麓にも桜が多く植わっている。しかも奥集落は先に述べた御嶽の乃木神社への読み替えが行われたところでもある。ナショナリズムと景観の関係について,なお一層の探索を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月の研究計画がコロナウィルス感染関連の様々な規制のため,十分に遂行できなかったため,一部遅滞は生じている。だが,2月までの調査・研究はおおむね順調にできたといえる。フィールドワークが十分にできないのは大きな障害ではあるが,その分,資料・情報の収集に時間を配分することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
都道府県間の移動制限が緩和され,各自治体が外来者への流入制限を緩和していけば琉球列島でのフィールドワークは可能となるであろうと考えるが,第二次感染が予測される中で,フィールド調査に重きを置き続けることは,現実的な計画ではないといえなくもないだろう。資料調査を中心に調査対象地を全国に広げてみることで,比較研究を行うことは可能と思われる。また居住地である東京都であれば,フィールドワークは可能であるので,それも含めて,この方向を探っていきたい。
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Causes of Carryover |
3月に計上していた外国旅費の執行が,コロナウィルス感染関連の規制により行えなかったため。翌年度に計画している回数を増やすか,その日程が取れない場合は,期間を延長することで対処したい。また一部を国内旅費に回すことも考えている。
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