2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01177
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大城 直樹 明治大学, 文学部, 専任教授 (00274407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宮古神社 / 国家神道 / 御嶽 / 社会教育 / 景観 / 立津春方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナ禍のため,フィールドワークを一度しか行いえなかったので,当初予定の通りに研究計画を進めることはかなわなかったが,宮古島出張の際,事前にマークしていたチェックポイントを回りきることが出来たので,宮古神社に関する論文を書き上げ,雑誌に掲載することが出来たのは不幸中の幸いといえよう。社会教育と景観と郷土意識の三者関係が本研究のテーマであるが,1925年に建立された宮古神社は,本来琉球=沖縄に根付いていなかった神道の施設であり,在来の御嶽信仰とは別物である。ただし,1879年の廃藩置県(所謂琉球処分)以後,徐々に神道の影響は強くなっていき,戦局も深まった1940年の「皇紀二六〇〇年」紀年の際には,ナショナリズムの高揚と相まって,御嶽が神社に読み替えられていく事例も増えていった。宮古神社はそれ以前に建立されていたが,まさにこの1940年に,その移設をめぐって宮古島内で侃々諤々の議論が沸き起こることとなった。その中止人物が立津春方である。長く務めた小学校校長を辞め,当時は隠居していたのであるが,祥雲寺の住職を務めるなど宗教事情に詳しかった人物である。春方の主張は,移転先の問題よりも,産土神を祭神とすべきであって,神仏習合的な権現を合祀すべきではない祭神に重点を置くものであった。学校教育のみならず社会教育においても強い影響力をもったこの人物を追っていくことで,今年度は,宮古神社と御嶽の関係,神仏習合に絡む権現の位置づけ,地方政府との衝突等,ナショナリズムと民俗知の関係性の一端を,宗教施設の移転をめぐる騒動から明らかにすることが出来たものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため,移動の自粛等により出張できないことで,現地調査が困難となっていることが大きい。かつての琉球王国の範域である奄美諸島から八重山群島までカバーする計画であったが,今までのところ,沖縄本島と宮古島だけに終わっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度であるので,コロナ禍の終息も予断を許さない以上,対象範域を縮小したいと考える。奄美諸島を断念し,沖縄本島,宮古島,石垣島に絞って現地調査を行うこととしたい。また,現地で調達してきた資料・書籍等については,古書店などから入手することでどうにか対応していきたい。現地に迷惑の掛からないよう,可能な限り現地在住の研究者に連絡して,慎重に調査を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による緊急事態宣言等もあって,当初予定していた琉球列島での現地調査が1度しか行えなかったことと,学会等の会議もZoomでの開催となったため,旅費の支出が最低限となったため,大幅な繰越金額となった。資料・書籍についても,現地での購入を前提としていたため,繰越金額が増加してしまった。次年度は,緊急事態宣言が解除になった場合に,可能な限り現地調査を行うこと,資料・書籍も古書店を利用するなどして,現地に行かずとも支出できるようにすること,また資料整理等の人件費にもある程度回すことで,対処していきたいと考えている。
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