2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01177
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大城 直樹 明治大学, 文学部, 専任教授 (00274407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会教育 / 景観 / 場所 / 御嶽 / 神社 / アイデンティティ / 青年会 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19の猛威もあって,当初の計画通りにはいかなかった研究期間の最終年度は,結果的に11月に行われた2023年度人文地理学会大会での特別研究報告に結実する調査・研究を行い得たことで,充実したものとなったといえる。また沖縄本島に3回(9月,11月,2月)行けたことは幸いであった。近代の国家神道と在来の神社との関係を資料調査をもとに,現地を確認できたし,またこれまで行ってきた沖縄固有の御嶽信仰との関係も現地調査することが出来たからである。 本研究の当初計画は,奄美諸島から与那国至る琉球列島の全域で,御嶽信仰が近世期・近代期を通してどのように変容していったか,とりわけ後者は社会教育の実践媒体である青年団(青年会)の活動実績に着目し,特に彼らが集落景観に多くの建造環境を敷設していったことを市町村誌また字誌から洗い出し,現場を確認していこうというものであった。コロナ禍のため,実際に行くことが出来たのは,沖縄本島と宮古島にとどまらざるを得なかったが,それでも,特に宮古島では思いの外多くの事実を確認することが出来たし,以前に論文で書いた八重山の事例と対照させることもできた。 また特に青年団の活動に着目してきたが,彼らが集落の建造環境の構築に大きな役割を果たしていたことはあまり知られていない。橋や公園,拝所の整備,道路の普請など,が主なものであるが,この他,沖縄には生育していなかった桜の木の植樹(台湾寒緋桜)を盛んに集落の周りで行っていたことには注目すべきである。むろん当時はナショナリズムの潮流に竿を差す形で行われたのであるが,それらが今日もなお,まなざされる際の意味的文脈を異にして我々の眼前に展開しているのである。郷土意識の発現形態の一端として集落景観の系譜をたどることで,社会教育が景観形成に果たした役割を知ることが出来たのである。
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