2019 Fiscal Year Research-status Report
Institutionalization of geography and bringing up founders of open-air museums in Wales and Ireland
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19K01179
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河島 一仁 立命館大学, 文学部, 教授 (90169714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハーバート・ジョン・フルール / 地理学の制度化 / 博物学 / 海洋動物学 / 野外博物館 / ガーンジー島 / アベリストウィス大学 / ウェールズ |
Outline of Annual Research Achievements |
ウェールズにおける地理学の制度化が、野外博物館の創設に与えた影響を解明することが課題である。アベリストウィス大学・動物学部の教授であったH.J.フルール(1877-1969)が、1918年に同大学の地理学・人類学部の初代教授になることをなぜ引き受けたのか、また彼が弟子をどのように教育したかを具体的に論じる予定である。その前提として、フルールがなぜ海洋動物学を専攻するにいたったのか、言い換えると地理学者になる以前の学術的背景を2019年度に明らかにした。 彼の出身地はガーンジー島である。そこに位置するプリオー図書館でフルール家の戸籍資料を入手した。19世紀の同島における博物学研究とフルールとの接点を探り、彼に海洋動物への関心を抱かせた人物を析出することにした。 同図書館が所蔵する“The Guernsey Natural Science Society”(ガーンジー自然科学協会)の年次報告と、“The Guernsey Society”(ガーンジー協会)の会誌を資料とした。1882年にガーンジー自然科学協会は発足した。1891年頃にはこの協会は植物・昆虫・地質などの部会を擁していた。 1902年に海洋動物の部会ができ、翌年の年次報告にアワビに関するフルールの論文が掲載されている。この頃、彼はアベリストウィス大学の学生であった。年次報告を読むと、同部会が彼の研究の進展をいかに期待していたかが明らかである。この部会の長で、同協会の会長でもあったW.シャープが彼を高く評価していた。シャープとフルールがどのような関係にあったかは、ガーンジー協会の会誌に掲載されたフルールの懐旧談で明らかとなる。シャープはフルールが通った中等学校の校長であった。海洋動物に関する調査に関して、少年期のフルールを指導したのはシャープであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年9月に、チャネル諸島のガーンジー島において、プリオー図書館での資料収集とフィールドワークを行った。以上の成果をもとに、論文を発表することができた。19世紀のガーンジー島における博物学の蓄積とフルールが関連すること、彼が後年に地理学ならびに自然人類学を考究する基礎に海洋動物学があることが明らかとなった。以上の理由で、おおむね順調に進展している、と評価する次第である。 当初の計画では、アベリストウィス大学のアーカイブでの文書の調査、The Royal Geographical Societyでの調査、マンチェスター大学での資料調査などを2019年度に行う予定であった。2020年3月に渡英を企図していたが、新型ウィルスの蔓延のため断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究は、フルールと彼の3人の弟子との関係、地理学の制度化、野外博物館の創出という3つの論点を重視している。2019年度のガーンジー島での調査で、19世紀における博物学研究の成果と研究者の育成に関しておさえる必要を痛感した。博物学の研究は、職業的ではない研究者によって担われていた。この事実を確認して、より広い視野で、大学における地理学の制度化、ならびに野外博物館の創出を捉えるべきと考えた次第である。つまり、地理学の制度化に関しては、地理教育の振興とその社会的な必要性をふまえるべきで、野外博物館の創出については、計画の立案と予算の支出を支えた政治状況も押さえることになる。以上の成果をもとにして、2020年度以降の研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月に、イギリスでの資料収集を予定していたが、新型コロナウィルスの蔓延のため渡英を中止した。そのために次年度使用額が0より大きくなった次第である。2020年度には、ウェールズのカーディフに位置するSt. Fagans National Museum of History (セントファーガンス国立歴史博物館) での資料調査を予定している。2020年3月に行くことができなかったアベリストウィス大学のアーカイブでの資料調査も2020年度に行いたいと考えている。 アベリストウィス大学でフルールが学生時代を送り、教授となり、そして一番弟子のピートが薫陶を受けた。そしてピートはカーディフのセントファーガンス国立歴史博物館の創設に貢献した。この2人に関して注目して、資料の収集を行いたいと考えている。しかし、新型コロナウィルスの蔓延と感染者の増加が、日本のみならずヨーロッパでも顕著である。仮に日本での収束が実現しても、イギリスの状況が悪い場合には、行くことはできそうにない。そのため、現地に行くことに関して、変更もしくは中止を余儀なくされることもありうると考えている。
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Research Products
(1 results)