2019 Fiscal Year Research-status Report
オーストラリアの大都市圏に対するアジア系留学生のインパクトに関する地理学的研究
Project/Area Number |
19K01184
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
阿部 亮吾 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (10509144)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本人留学生 / 移民エスニック空間 / シドニー大都市圏 / オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2000年代以降のオーストラリア大都市圏におけるアジア系留学生の急増が都市の発展に及ぼす社会-経済的なインパクト、ならびにそれらの相互関係を明らかにすることである。 令和元年度には、シドニー大都市圏の日本人留学生(語学留学生、専門学校留学生)を対象にライフヒストリー調査を行い、かれらの留学生活や都市内移動と労働経験が、シドニー大都市圏の都市発展といかなる関係にあるのかを分析した。その結果、1つ目のパターンとして、シドニー到着後の早い段階に都心部(CBD)のシェアルームで生活を始め、都心部の語学学校に通いながら短期間に数多くの転居と転職を繰り返し、徐々に郊外(インナーサバーブ)へと移動していくパターンが浮かび上がった。その場合、郊外から通勤可能な都心部での仕事(アルバイト含む)を継続しながら、やがては郊外での仕事へと転職していくことになる。もう1つのパターンが、来豪当初から郊外(インナーサバーブ)に立地する語学学校に通い、仕事も住居も郊外に見出すパターンである。この場合は、最後まで郊外での生活を継続するのか、逆に都心部へと転居していくのかでさらに2つのパターンに分かれていくものと予測される。 こうした留学生の個人的な都市内移動パターンは、2000年代以降のシドニー大都市圏郊外(インナーサバーブ)における移民エスニック空間の成長プロセスと結びついていることが推察され、たとえば中華系やコリア系、インド系移民といったより人口規模の大きな移民たちが鉄道拠点駅周辺にそれぞれ独自の移民エスニック空間を発展させてきたことで、日本人留学生にとっても生活の便良く暮らせる空間が見いだされている可能性がある。 次年度以降は、中国人留学生と英語の話せるフィリピン人留学生の生活パターンを調査する予定であり、アジア系留学生の急増が都市発展に与するインパクトをさらに明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度には、シドニーへの2度の渡航を計画し、最初の調査は無事終えられたものの、2度目の調査をコロナ禍の影響で断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、シドニー大都市圏の日本人留学生に加えて、中国人留学生や英語の話せるフィリピン人留学生の都市内生活・行動パターンを調査する。出身国や言語資源の差異、人口規模や移民エスニック空間の有無が、留学生活の違いを生み出していることが予想されるため、比較可能なインフォーマントを多種集めることで、アジア系留学生がシドニー大都市圏の発展にもたらすインパクトを総合的に明らかにできるものと考える。
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Causes of Carryover |
年度末に発生したコロナ禍の影響で、令和元年度に2回予定していたオーストラリアでの調査計画の1回分を断念せざるを得なかった。次年度は、その断念した分の日本人留学生調査に加え、中国人留学生やフィリピン人留学生の都市内生活・行動パターンを調査するため、2回の渡航を予定している。
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