2019 Fiscal Year Research-status Report
Memories of Place/Politics of Place at the Island of Lampedusa in the Mediterranean Sea
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19K01185
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北川 眞也 三重大学, 人文学部, 准教授 (10515448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ランペドゥーザ / 場所 / 地中海 / 批判地政学 / 記憶 / 島嶼性 / インフラストラクチャー / 移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主にランペドゥーザ島を理解する上で不可欠となるより広範囲の地域的文脈、さらには概念的文脈に関連する研究をいくつか公表することができた。 編集委員を務めた『現代地政学事典』の出版が何より重要だった。332項目からなる本事典では、場所や島嶼、批判地政学に関連する項目も編集委員として設定した。また、5項目の執筆も担当した。本事典は外国人研究者に依頼した項目もあったが、そのうち10項目(1項目は共同の翻訳)の翻訳・編集も務めた。執筆担当の項目では、批判地政学、移動、移民について、これまでに蓄積されてきた議論、さらには最近の議論も含めて記述した。 2019年6月に来日したイタリア・ボローニャ大学の研究者であるサンドロ・メッザードラの講演の翻訳・編集を共同で行い、「ヨーロッパの難民・移民と階級をどう見るか?--境界研究の理論的視座」として公表した。移民、境界、ヨーロッパ空間をめぐる議論の最前線にいる研究者のこの講演においては、現代の地中海とヨーロッパの文脈におけるランペドゥーザ島の状況も述べられ、これは重要なものだった。 また、「移動と共生」研究会において、「移動・避難の自律性/政治性を考えるために--場所の開放性、境界の多数性、軌道空間の生産・領有、インフラ・ロジスティクス」と題した発表を行った。地中海の移民の移動性が中心の議論だったとはいえ、ランペドゥーザ島の場所の形成に深く関わる内容でもあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ランペドゥーザ島の歴史および現在については、関連する研究やウェブページなどを通じて資料の収集、読解をすすめている。また地理学における場所の概念を、昨今の場所はもとより、空間、境界、移動、ロジスティクス、インフラストラクチャーなどの研究、さらには批判地政学の研究をフォローしながら批判的に検討している。ランペドゥーザ島の場所のあり方を考えるときに歴史的に極めて重要となる地中海、加えてヨーロッパといった地域についての研究の収集、読解もまたすすめている。さらには、島嶼性についての研究も収集している。これらは、ランペドゥーザという場所を理解する上で必要不可欠な、より広範囲の文脈を把握するものであると言える。 しかしながら、今年度(2019年度)は、新型コロナウィルスの影響で、2020年3月に予定していたインタビューを中心とした現地調査を行うことができなかった。遅れているのは、これが大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ランペドゥーザ島や地中海、場所などの地理学概念、特にはインフラストラクチャーやロジスティクスの観点からのその検討に加えて、ランペドゥーザ島での現地調査を行う予定である。しかし、今後の新型コロナウィルスの状況次第では、2020年度の現地調査も困難であるかもしれない。ウィルスの状況、国の規制、さらにはランペドゥーザという離島という条件下での医療の状況の不透明や不安定さに加えて、現地調査では何より島民へのインタビューが基本となることから、人びとがそれにすんなりと応じてくれるかどうかが未知数である。オンラインでインタビューを行うことも考えているが、それはすでに信頼関係のある島民に限られることになろう。いずれにしても、2020年度の調査実施状況次第では、2023年度までの本研究課題の遂行可能性および継続そのものを再検討しなければならなくなる。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウィルスのために、イタリアで現地調査を行うことができなかったから、また現地調査ができない状況を考慮して、本研究におけるデータの保存、整整、作業および研究で用いる予定のパソコンの購入を控えたからである。費用は基本的に、2020年度以後の現地調査、ならびにパソコンの購入において使用する予定である。
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Research Products
(3 results)