2019 Fiscal Year Research-status Report
The study of environmental geopolitics about modern environmental history in the coastal area
Project/Area Number |
19K01188
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
香川 雄一 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (00401307)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境地政学 / 環境史 / 環境問題史 / 沿岸域 / 集水域 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境地政学的な観点から、気候や地形による要因、さらには長期的な人口変動にともなう環境史から論点を導き出し、人新世という概念を援用しつつ、近代以降の人為的環境改変による環境問題史についての研究方法を検討した。具体的な調査対象としての大都市周辺に存在する沿岸域の環境史については、政治史的な分析方法での調査を準備した。 近代以降の環境史を対象とするにあたって、地形図や統計データといった資料を収集しつつある。国土全域を網羅するような地形図が刊行され、一定の間隔を置いた測量結果を基に、沿岸域の土地利用変化を分析しつつある。このように干拓や埋め立てによる沿岸域、さらには集水域を含めた近代以降の土地利用変化を把握していくことになる。 地形図の変遷によって明らかにする景観の変化に加えて、沿岸域に与えた環境変化に対して、集水域にまで影響する社会的要素の範囲を広げて資料収集を試みた。人口や産業といった各種社会的統計データから、歴史的変化の変容過程を明らかにするための準備をしている。ここでも近代以降を対象とすることで、地形図の発刊年代とほぼ同期間での統計データの比較している。 地形図や統計データの収集及び分析によって明らかにしようとする、沿岸域の景観変化の理由に対して、変動が激しい時期を対象として、新聞記事や議会議事録の収集も始めている。沿岸域の経済成長期における地域開発が景観を著しく変化させてきたという環境史の分析に政治社会史的観点を加え、環境地政学的研究の土台を築きつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本国内の調査は順調に進んでいるが、年度末に予定した海外調査が2か所とも現地における災害やパンデミックの問題のために実現できなかった。 調査が進んでいるのは、複数時点の地形図の比較による環境変化の把握である。明治中期以降から現在に至るまで、1/50,000の地形図により、環境変化以前~環境変化~現在のそれぞれの時期の土地利用変化を調査し、沿岸域における環境史を解明しつつある。 さらに、統計データによる環境変化に影響を与えた要因の把握も進めている。明治中期以降の統計書から、詳細な地域データを収集でき、地形図から明らかにした土地利用変化に与えた影響や、それに起因する社会変動を数値的に分析している。 新聞記事の時系列的及び網羅的収集による環境変化にかかわる背景的要因の抽出も着手している。土地利用変化や統計データの推移から、歴史的事実としての環境史における背景について、新聞の地方版を数十年単位で時系列的に、環境変化に関する出来事は網羅的に記事を収集している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までは資料収集を進めつつあるので、今後は海外と国内の現地調査を進めていきたい。資料的分析によって得られた環境史と環境地政学の分析結果を、事実関係を記憶していると考えられる当事者にヒアリング調査を実施していきたい。 海外の事例における環境史の比較調査として、近代以降に人為的要因が湖沼の沿岸域に与えた影響をみていく。当初の予定ではカナダの事例を考えていたが、調査環境の問題も考慮してニュージーランドも候補地として考えている。 海外の事例における環境地政学の比較調査としての中国の沿岸域は変更していない。大気汚染や水質管理において地方分権が進み、地方政府が環境政策をまさに実行し始めようとしている中国において、行政機関や研究者、マスコミ、一般住民などの利害関係者が環境保全にどのように関わっているのかの環境地政学的な調査を試みたい。
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Causes of Carryover |
災害とパンデミックの影響により海外調査を実施できなかった。計画を再考して、海外調査に再挑戦してみたい。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 現代地政学事典2020
Author(s)
現代地政学事典編集委員会
Total Pages
859
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4-621-30463-1