2020 Fiscal Year Research-status Report
現代資本主義における「価値づけの装置」に関する経済地理的研究
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19K01189
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
立見 淳哉 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (50422762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大田 康博 徳山大学, 経済学部, 教授 (90299321)
立見 夏希 (川口) 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (80647834)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 創造産業 / 価値づけ / 地理 / 豊穣化 / コンヴァンシオン経済学 / 斜陽地域 / 社会連帯経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,市場交換の前提となる財・サービスの価値づけという観点から,多様な地理的現実,創造産業が集積する大都市の市場的装置の仕組みや,斜陽地域の活性化の可能性を理論的・経験的研究によってアプローチすることを目的としている。その際,「豊穣化の経済」という概念を導入することで,上記の二つの地理的現象を関連づけ,考察する。「豊穣化の経済」においては,「すでにあるもの」の歴史や文化を通じた「豊穣化」(=価値づけ)が,都市・企業の競争力の支えとなるだけではなく,斜陽地域への価値の再付与とその新たな発展可能性の芽をひらくものであることを示す。 前年度に引き続き,本研究を構成する二つのサブテーマである,①財の価値づけに関する研究と,②衰退地域への再価値付与というテーマを掘り下げた。①に関しては,まず,文献読解を中心とした理論的研究を実施した。立見がその成果の一部を進化経済学会大会オータムカンファレンスで報告した。また,メンバー全員で日本のアパレル産業分析に関する研究会を立ち上げ,オンラインで議論を行った。 他方で,②に関しては,立見と川口が中心となり,丹波篠山市の文化観光まちづくりに関して地域の主要アクターと協力関係を深め,インタビュー調査等を実施した。また①と②の双方に関わる今年度の最大の成果であるが,斜陽地域におけるオルタナティブな地域経済の実践として,フランス北部のリール地域を対象に,社会連帯経済の理論・政策・実態に関する書籍をメンバー全員が執筆者となり刊行した。社会連帯経済は共通財・善の価値づけに支えられた経済であり,具体的地域の経験をもとにその全体像を詳細に示した初の書籍である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示した二つの研究の柱に沿って各自が研究を進め,成果物を出している。ただし,前年度と同様に,新型コロナウィルスの影響でフィールド調査の制約が多く,具体的な研究調査の大幅な計画変更が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の柱に変更はないが,具体的な調査対象としては,フランスはもとより日本でも大都市に立地する産業の調査を円滑に行うことが容易ではなく,変更を計画している.具体的には日本の繊維アパレル産業や文化観光まちづくりを主たる対象として設定し,「豊穣化の経済」における価値づけの装置に関する考察を進めていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で海外調査(フランス)と国内調査を実施することができなかったため,旅費や通訳費等の人件費を使用することができなかった.21年度,上記の状況を伺いつつ,フィールド調査を準備実行する予定である.状況に応じて,データ分析の比重を高めたり,研究期間の延長を検討する.
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