2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on "the Strategic Management of Places" under the Principle of Eco-Social Market Economy from the Viewpoint of Economic Geography
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19K01191
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山本 健兒 帝京大学, 経済学部, 教授 (50136355)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 経済地理学 / 場所 / エコ社会的市場経済 / 地域整備計画 / フォラールベルク / ゲマインデ / 環境保全 / 土地利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はCOVID-19感染状況の故に調査対象地域であるオーストリア・フォラールベルク州への渡航が不可能となり、現地での調査研究をすることができなかった。そこで、2019年度に現地で収集した資料などの読解、インターネットでの現地情報の収集、あるいは日本国内他大学にある参考文献の取り寄せとその読解などに限定せざるを得なかった。 結果的に公表できた研究成果は、フォラールベルク州に立地する伝統的工業業部門に属する企業で、グローバリゼーション進展下でも活躍している企業の歴史と現状に関する論文1本だけである。しかし、この論文を執筆する途上で、次のような情報をインターネットを駆使することによって得ることができた。 フォラールベルク州に立地する有力飲料メーカーが工場拡張を計画したが、この計画はオーストリア及びフォラールベルク州の法律に基づいて緑地として永久保全すべきとされている場所の土地利用規制をはずさないと実現できないものであった。この問題をめぐって工場拡張予定場所の基礎的地方自治体(ゲマインデ)で、環境保全を重視する反対運動が起きた。そのゲマインデは人口約3千人の町で、フォラールベルク州の中では相対的に経済力が弱い南東部農村地域にある。この町に上記の飲料メーカーが立地したのは2009年であり、それによって町の財政が豊かになり、村民の就業機会が増えたと考えられる。 この一件は、エコ社会的市場経済原則の下で「場所に関する戦略的経営」を実行しているフォラールベルク州の実態を検証する格好の材料と言える。今後、オーストリア全体やフォラールベルク州のラウムオルドヌング(地域整備)やゲマインデレベルでの土地利用が「場所に関する戦略的経営」とどのように関係するのかという問題の解明も本研究課題全体の中に位置づけて研究を進める必要があるという認識を再確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染拡大を受けて、調査対象地(オーストリア、フォラールベルク州)への出張による調査研究が不可能だったため。
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Strategy for Future Research Activity |
海外出張が可能となれば、勤務先での業務との折り合いをつけて出張し、現地調査をしたいと考えている。それが不可能な場合には、これまで集めた資料や情報の読解と精査、かつインターネットなどによって得られる新しい情報の収集、そしてドイツ語圏における地域整備(ラウムオルドヌング Raumordnung)に関する理念とオーストリア・フォラールベルクの実態に関する文献研究などに基づいた論文執筆や、「エコ社会的市場経済」原則という考え方がフォラールベルク州の政策形成の基本となった背景事情を知るための関連文献の収集と読解に当面専念せざるを得ない。 研究実績の概要の最後に記したように、オーストリア全体やフォラールベルク州のラウムオルドヌングやゲマインデレベルでの土地利用が「場所に関する戦略的経営」とどのように関係するのかという問題の解明も本研究課題全体の中に位置づけて研究を進める必要がある。その際に、ラウムオルヌドングに関してはドイツに関する文献が豊富にあるので、ドイツとの比較も意識して研究を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染状況のゆえに、本研究課題のためのオーストリア・フォラールベルク州での現地調査研究ができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。2021年度には、現地調査研究が可能となる客観的条件と主体的条件が整えば、3週間程度の現地滞在を夏季休暇期間中や学年末試験終了後に行いたいと考えており、昨年度使用できなかった研究費を主としてそうした現地調査のための旅費に充てるべく計画している。また、研究課題に関わる文献を新たに見出すことができた場合には、その購入経費あるいは国内他大学にある図書等の借り出し取り寄せなどに充てる。
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