2022 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮時代の国土地理認識における「水経」の基礎的研究
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19K01196
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
轟 博志 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (80435172)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歴史地理学 / 水経 / 朝鮮王朝 / 実学 / 申景濬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、朝鮮王朝時代における地理学者たちの国土地理認識に関する、研究代表者の一連の研究の集大成に位置付けられるものである。研究代表者の仮説は、朝鮮王朝、特に儒学者たちによる実学研究が最盛期を迎えた18世紀中盤の英祖代において、国土地理研究も完成期を迎えたことを前提としている。 申景濬に代表される、国政にも一定の影響力がある地理学者たちが、国家間としての心象地理形成に寄与したところは非常に大きかった。 既存の研究では、国土地理の主たる構成要素のうち、山と道路、そして都市に大きな労力が割かれていた。一方で、河川に関してはほとんど言及がないままであった。そこで本研究では水路分析に注力した。 最終年度は、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響で、止むを得ず課題期間を3か年から4か年に延長したため4年目の年度となった。2020年度と2021年度に予定していた現地調査のやり残した分を2022年度にまとめて実行した。特に、これまでの文献研究で新たにリサーチクエスチョンとして浮上した、水経において「語られていない」部分の地理的分布とその発生要因について探求した。結果は2023年度に発表するが、端的に言えば、山経と同様の12水系にまとめようとすると、大規模な河川水系中心にならざるを得ず、海洋に近い小規模の河川が捨象されてしまっているということである。その結果、山経や道路は全ての邑治をカバーしており、また邑治の存在を前提とし、そこから逆算して経路を作っているのに、水経は全ての邑治をカバーできていないという矛盾が生じた。 また本年度の別の実績として、総仕上げの意味を持って、関連する国際学会(T2M)での発表を行った。東洋と西洋における国土地理認識の差異に関する突っ込んだ討論も誘発し、本研究で構築した理論の完成度を再確認できた。また、論文投稿の提案も頂いた。
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