2023 Fiscal Year Research-status Report
タイ北部山地先住民のエスニック・セキュリティとその最適化に関する人類学的研究
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19K01203
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
綾部 真雄 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (40307111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 千尋 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (60319994)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | タイ / 先住民 / リス / セキュリティ / 文化振興 / ポリティクス / アクションリサーチ / 儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、8月末から9月初旬にかけての15日間、3月下旬の7日間に亘っての2回の現地調査(タイ)を研究分担者の白川氏(大阪大学)と共同で行ったほか、その成果の一部を10月にインド・デリーで行われたIUAES(国際人類学民族科学連合)の本大会において公表することを得た。 2023年の8月から9月にかけての現地調査においては、メーホンソーン県内の対象村においてフィールドワークを行い、研究代表者のために執り行われた招魂儀礼に参加したほか、主として2023年5月に行われた下院総選挙の村内での動向についての聞き取りを実施した。また、それに併せて先住民のNGOワーカー、社会活動家、選挙活動従事者らへの各村内でのインタビューを実施し、タイにおける先住民運動と国政との関連が、村落レベルの文化的セキュリティとどの程度の相関を持つかについてを把握することに努めた。 2024年3月に行った現地調査においては、タイにおけるリス内部の文化復興・振興運動の概要と運動内部の社会的・政治的葛藤の現場に身を置くことを主眼にインタビューと参与観察を実施した。なかでも、2022年に新規に設立されたある特定クランの人々の主導による文化振興を目睹とした財団の顧問(=研究代表者)に就任し、その年次大会(3月25日)に内部者の立場で参加したことは、リスの人々にとっての文化的なセキュリティの現在的様態を知るうえで大きな意味を持った。 2023年10月には、2022年度までに得た一次資料と2023年の8月-9月期に実施した調査データの一部を用い、IUAESにおいて「Crafting a Way Out of Marginalization: The Lisu in the Thai Highlands and Vernacularly Embedded Sensemaking」という題目での成果公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始2年目から新型コロナ感染症の影響により、現地調査をほぼ3年間に亘って実施することが不可能になり、結果的に2回の繰り越し申請を行って2024年度まで研究実施期間を延長することにした。2022年度には短期で1回の現地調査を行うことを得たが、当時はまだ新型コロナウィルス感染症による行動制限があり、十全な結果は得られなかった。ようやく2023年度からほぼ制限がないかたちでの調査を再開することを得、それ以降の調査・研究は順調に進んでいる。ただし、3年間の遅れを完全に取り戻すには至らず、2024年度に補完的な調査を行って最終的な成果報告に結び付けたいと考えている。 以上の理由により、「やや遅れている」という自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2024年度には、いま一度メーホンソーン県内の対象村落におけるインタビュー、参与観察、能動的な関与(文化振興活動への提言等)を中心に置いた調査を実施することを計画している。これまでは、新型コロナ感染症の影響により、研究全体をリスにまつわる総体的な動きに関する把握にシフトせざるを得ない状況があったため、そこで得た結果をより草の根レベルでの人々の思惟や活動とリンクさせることで、具象性と俯瞰性の双方を併せ持った研究の推進に努めたい。
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Causes of Carryover |
当初申請した4年間の研究期間のうち、実質的に3年間に亘り新型コロナ感染症の影響により現地調査を行うことがかなわなかったため、2022年度に2023年度への繰越申請を行い研究を続行した。それでもなお3年間の渡航不可能期間を補うに足る十分な研究期間の確保には至らず残額が発生したため、2024年度にもう1年の研究期間を設けることとし、あらためて繰越申請を行った。 ただし、2023年度の航空運賃の高騰により執行額が当初予定を上回ったため、2024年度に執行できる残高はわずかである。したがって、2024年度夏期を目睹に1回のみのタイ現地調査を補足的に行う予定としている。残額はすべて海外渡旅費に充てる。
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Research Products
(5 results)