2020 Fiscal Year Research-status Report
Toward a multicultural community: A study of non-Japanese nationals in the Roman Catholic Church in Japan
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19K01206
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
寺田 勇文 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (20150550)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カトリック教会 / フィリピン人 / ベトナム人 / 移住者 / 宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、本研究の第2年度目にあたる。現在の日本のローマ・カトリック教会における日本人以外の外国籍の信徒、とくにフィリピン人、ベトナム人等がおかれている状況について、フィールド調査とインタビューおよび新聞や教会関係の機関誌の記事等を分析することを目的としている。 2020年度も、初年度にひきつづいてフィールド調査を実施する予定で進めてきたが、2020年1月以後の新コロナ・ウイルス感染症の発生により、2年度における国内外でのフィールド調査、インタビュー調査は実施することができなかった。学会発表も初年度の最後、2020年1月末にフィリピンのアテネオ・デ・ダバオ大学で発表を行ったのが最後となった。 こうした状況のため、2020年度は本研究課題に関する文献、資料、とくに教会関係の雑誌、月報、ウエッブ上の報告、記事など、過去30年分を中心に蒐集し、日本のカトリック教会における外国籍信徒の増加状況について分析を進めた。具体的にはカトリック東京大司教区教区ニュース、カトリック東京国際センター、仙台教区、新潟教区などの定期刊行物およびホームページ上で告知されているニュース、カトリック新聞、カトリック雑誌、また、外国籍信徒が多い個別の小教区教会の刊行物、ニュース等を分析の対象とした。これらのデータは現在、時系列にわけて整理する作業を継続中である。 これまで主として東北地方(岩手県、山形県)、関東地方(東京都、千葉県、埼玉県、茨城県)を中心に調査を進めてきたが、こうした文献資料調査を体系的にすすめることで、より広い地理的範囲のなかで外国籍信徒の共同体の生成、発展を概観することが可能になった。また、2年度は研究室に閉じこもることが多かったこともあり、これまでの調査をまとめるために、日本のカトリック教会と外国人(外国籍信徒)をテーマとする書籍の執筆を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年2月下旬以後、日本のほとんどのカトリック教会ではコロナ対策として、ミサや会合を中止、または出席者数の制限と事前登録制がおこなわれ、調査目的で教会を訪問することは不可能となった。また、申請者のような首都圏在住者が県境をこえて、とくにコロナ罹患者の少ない地域へ移動し、関係者のインタビューを行うことも自粛する必要があった。そこで従来のフィールド調査、対面でおこなうインタビュー調査、参与観察とは別の方法を見いだす必要があった。 カトリック教区、教会によっては小人数でおこなわれるミサをインターネットで同時配信したり(東京教区など)、四旬節、復活祭のミサや祈りを毎夜インターネットで同時中継しているところがあり、そうした機会に参加することができた。たとえば東京教区のフィリピン人共同体は、在京のフィリピン人司祭を中心に毎夜9時からフィリピン人信徒100数十名がZoomでミサや祈りに参加するなどしている。四旬節期間中には連続50日近い祈りの会が行われた。 コロナ渦で、フィリピンのカトリック教会、また、ローマ在住のフィリピン人神父、修道女、神学生からなるフィリピン人共同体が毎日、あるいは毎週定期的にミサをインターネットで同時配信しており、日本で暮らすフィリピン人信徒で参加する者も少なくなかった。 このように2020年度はフィールド調査はできなかったが、インターネットを通じての参加観察、電子メールやSMSのメッセンジャーを通じての非公式のインタビューなどを行うことができた。最大の研究成果は、「研究実績の概要」で述べたように、文献資料の蒐集と分析であった。これにはかなりの時間が費やされたが、データを時系列、地域別に整理、分類することで、日本のカトリック教会における外国籍信徒の増加を過去30年から40年(1980年初め以後)に溯って把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で述べたように、2020年度はコロナ渦の影響で、それ以前とは異なる調査方法を採用することを余儀なくされた。現在(2021年4月)、日本国内でも何度目かのパンデミックを迎えており、こうした非常事態は少なくとも今年度末まではなんらかの形で継続すると推測される。そこで国内外への調査目的、学会発表のための移動がむずかしいであろうことを考慮し、文献資料にもとづくデータの整理、分析を進めるとともに、これまでの研究の締め括りの一段階として、日本のカトリック教会と外国人信徒に関する単行書の準備を進める。 2020年度には、アジア研究関係の国際学会で本研究をテーマとするパネルを組織していたが、残念なことにコロナ渦の影響で学会開催は中止となった。同学会は2021年7月に開催される見込みで、パネル公募にあらためて応募し、採択されたが、今年度も中止が決まった。2021年8月には京都で国際アジア研究学会が予定されており、本研究のテーマに関連するパネルが採択された。ただし、コロナ渦のため、オンラインで実施されることになった。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ渦のため、国内外での調査旅費、学会出張旅費等を執行することができなかったので、2021年度に使用することにした。今後のコロナ渦の推移については予断を許さないが、2021年度後半、とくに秋以後に調査旅費等を使用するにしたい。
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