2020 Fiscal Year Research-status Report
The role of "Hometown" as a cultural and social system playing in the migration and network-making of Chinese overseas from Fuqing
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19K01212
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
張 玉玲 南山大学, 外国語学部, 教授 (60511110)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 僑郷アイデンティティ / ルーツとしての故郷 / 二つの「故郷」 / 「新華人」 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究目的であった、華人の移住・定住過程における「故郷」とのかかわり方や同郷・同族者間連携における「故郷」が機能するメカニズムの解明は、新型コロナウィルスの感染拡大によって、華人の移住地であるインドネシアや香港での調査が不可能となったため、日本在住の華人を対象とする限定的な研究となった。 2020年度では、日本に移住した華人の家族史のまとめ・分析に重点を置いて研究を行い、移住地である日本での同族、同郷者間の連携及び文化継承、経済活動などに現れる「故郷」についての表象と語りについて、世代間の違いに留意しつつ考察を行った。確認された事項は以下の通りである。 ①出身村である「故郷」に愛着を持つ一世とそれを父母への愛情の一部として受けついだ二世は、移住と定住、そして戦争、冷戦などの「不安定」な要素に制約を受けながら(受けたからこそ)、故郷とのつながりを経済活動と文化継承などのルートを通じて維持してきた。②その一方、定住過程に築き上げた居住地とのつながりを基盤に経済活動や文化継承の維持・拡大を可能にした部分もあり、居住地の社会・文化を構成する一員としての意識は自他ともあるように思われる。いわゆる「二つの故郷」を持つと考える人が多い。③世代交代が進むと、故郷はルーツとして認識されながらもつながりが薄くなったが、国際社会における中国のプレゼンスの向上や新華僑との接触の増加により、故郷への関心が高まる一方、より「日本化された中国人」だという意識が強まった。④様々な文化的背景を持つ華人や非華人による「華僑」「華人」概念の多様な捉え方、「華僑」「華人」としての生き方の多様化など、従来の華僑華人研究と違う視座を取り入れることも課題として確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナの感染拡大により、日本での、それも限定的な調査しか行うことができず、当初予定していた研究調査項目の大半が遂行できなかったため、研究計画が遅れていると言わざるを得ない。一方、日本国内での調査研究から新たに発見し今後の課題に加えていくことに値する成果を得たことも収穫の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も日本以外での調査は困難であると予想されているため、これまで研究対象とされてこなかった、地方に居住する華僑の移住・定住の歴史を掘り起こし、まとめる作業に変更することを考えている。 具体的には、本研究の対象でもある福建省福清地方の出身者が来日当初、横浜、神戸などいわゆる華僑の集中地区ではない、日本各地の農山村地区に移住してからの歴史とこれらの地方における華僑コミュニティの形成・変動について、日本が国民国家の形成期と合わせながら日本の社会史・近代史の枠組みの中でとらえなおす予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外出張が不可能になり、日本国内の出張も制限されたため。
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