2021 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive research and filming of traditional beekeeping of Japanese honeybee in mountainous areas of Japan
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19K01215
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
真貝 理香 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (30758818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹川 大介 北九州市立大学, 文学部, 教授 (10285455)
甘 靖超 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20789044)
スピーゲルバーグ マキシミリアン 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (30811301) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニホンミツバチ / 養蜂 / ドメスティケーション / 伝統養蜂 / 映像 / トウヨウミツバチ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もコロナ禍により国内の調査は極めて制限されたが、1)紀伊山地:調査2回(真貝)、信州・中部地域:オンライン/電話による養蜂家インタビュー(甘)を行った。 現地調査や映像撮影が困難であったため、本年度は下記4点にも注力した。2)ニホンミツバチ伝統養蜂の歴史的文献・データ調査、3) 研究のアウトプット(学会発表、単行本書籍の担当章執筆)、 4)「ニホンミツバチ養蜂をめぐる研究会」主催、5)近隣アジア諸国のトウヨウミツバチの養蜂調査・情報収集:台湾のフィールド調査(スピーゲルバーグ)、中国における中華ミツバチ養蜂の文献調査(甘)。 特に4)の研究会では、各地域:九州(竹川)、紀伊半島(真貝)、信州(甘)、対馬(対馬市島おこし協働隊の方による)の事例やニホンミツバチ養蜂史などが報告された。養蜂技術の変化や地域差、さらに生態系サービスにおける養蜂のポテンシャルを視野にいれるため、1980年代から養蜂文化研究に携わった研究者や森林管理関係者にも参加を仰ぎ、意見交換を行った。また野生種のニホンミツバチの飼育・家畜化をめぐるヒトとの関係は、本科研課題におけるテーマの一つだが、当研究会において「野育(wild-keeping)の環境論-あえてドメスティケートしない自然観」も発表した(竹川)。 5)の台湾調査はインタビューや各地の養蜂技術の写真・ビデオ記録を含み、今後、ニホンミツバチの伝統養蜂をアジアの中で位置付ける比較資料として、貴重なものとなる。 本年度は映像撮影自体はできなかったが、「フィールドワーク教育におけるドキュメンタリー映画の活用-生業研究における映像記録の可能性と限界」についてまとめ、学会発表を行った(竹川)。また近年、在来種のニホンミツバチの養蜂は注目を集めており、紀伊半島の森と養蜂の歴史に関するテレビ番組(テレビ和歌山)への出演依頼もあった(真貝)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【進捗がやや遅れた点】2年連続のコロナ禍にあり、伝統養蜂は地方の山間地域、高齢者によって営まれることが多いため、フィールド調査および映像撮影を控えたことが理由である。特にニホンミツバチの採蜜は、通常1年に1回の季節的イベントであり、その期間が感染拡大期と重なったため、現地の訪問・映像撮影が困難であった。現在までの調査では、養蜂家の「養蜂技術」に関するインタビューや写真撮影が主になっており、養蜂家間のネットワークや、他の「マイナーサブシステンス」、「生業複合」に関する聞き取り調査は進んでいない。また近年、養蜂巣箱の盗難が各地で相次いでおり、巣箱の位置情報やマッピングの公開は、差し控えることとした。 【順調に進捗した点】「ニホンミツバチ養蜂をめぐる研究会」の開催により、養蜂に関わる他の研究者とともに、現代段階の当科研の研究進捗状況を確認し、伝統養蜂の技術的な多様性、時代的な変化を共有することができた。比較資料としての近隣のアジア諸国の養蜂情報については、順調に収集することができている(台湾・中国)。 【過年度に作成した映像の評価】 2019年度製作「古座川の伝統養蜂-和歌山県古座川流域のニホンミツバチ養蜂」のフィルム(30分)は、2020年3月にアップロード後、視聴78,817 回(2022年5月19日現在)と、多くの方に視聴していただいている。また同フィルムは、2021年度「人間文化研究機構における博物館・展示を活用した最先端研究の可視化・高度化」事業の一環として、15分版の【短編】としてリメイクを行い、下記の通り、モバイル型展示として上映された。・国立歴史民俗博物館メディアルーム(2022年1月18日-2月13日)、文部科学省情報ひろば(2022年2月16日-3月22日)
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度のコロナウィルスの感染状況が不透明ではあるが、 1)伝統養蜂フィールドワーク:各地での調査を再開し、あらためて基礎的な養蜂技術や周年活動、養蜂用語の収集、技術の伝播や共有(飼育者間ネットワーク)、過去の養蜂の伝聞、歴史史料などの情報を調査する。生存に必須ではないハチミツを採集するために人々が行う行動の数々は、山間地域のいわゆる「遊び仕事/マイナーサブシステンス」を考察する上でも興味深く、養蜂以外の地域の生業との関連、林業政策や蜜源植物についても調査を行う。 2)ショートフィルムの製作:1)と並行して、今まで映像撮影を行うことができなかった地域(九州・信州)の撮影・映像製作を行う。近年の趣味養蜂ブームはさらに加熱しており、インターネットによる養蜂技術情報が広まり、各地で養蜂の多様性が失われつつある。現代に残る伝統的養蜂を民族誌フィルムとして記録することは極めて重要であり、一方で変化しつつある現状を映像化することも意義深い。 3)各地の事例共有と比較考察:本科研課題の最終年度であり、①地域別研究報告と考察、②総論をまとめた報告書を作成する。この報告は研究者に加えて、一般の方も含めた読者を想定し、研究の可視化という側面から、養蜂技術の差や地域景観がよくわかるように、写真も多用した内容とする。また各地域の養蜂技術の経年変化を追うため、過去に当該地域を調査した研究者にも、写真提供(撮影者のクレジットつき)のご協力をいただく予定である。 4)研究成果の発信:各研究者の論文や学会発表に加え、成果内容を広く社会(養蜂家・養蜂に興味のある方々・研究者)に発信する報告会を開催する。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナ禍にあり、調査地におけるフィールド調査の機会が限定され、映像撮影を行うことができなかったため、繰越し金が発生した。 次年度は、本年度分も含めた予算で、積極的にフィールド調査および、映像撮影を行う。
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Remarks |
(1)2019年12月開設「ニホンミツバチ養蜂文化ライブラリー」2021年度も内容を拡充。https://japanese-honeybee.info/ (2)スコットランド養蜂家協会招待講演:Shinkai, Spiegelberg, Rupprecht(2022/01/15) https://register.gotowebinar.com/register/8297191139087464461
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Research Products
(7 results)