2021 Fiscal Year Research-status Report
中国―南太平洋島嶼国関係の変化と「オセアニアン・チャイニーズ」像の表出
Project/Area Number |
19K01216
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
河合 洋尚 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (30626312)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環太平洋 / 広東省 / 客家 / 華僑社会 / 僑郷 |
Outline of Annual Research Achievements |
1978年12月に中国で改革開放政策が実施されて以降、中国と南太平洋島嶼国との交流が再開した。南太平洋島嶼国の華人は中国を訪問するようになり、逆に、21世紀に入ると中国から南太平洋島嶼国への新移民が急増した。そうした状況のもと、南太平洋島嶼部で生まれ育った華人は、大陸の中国人との言語・文化的な違いを実感し、「オセアニアン・チャイニーズ」としての自己像を提示するようになっている。本研究は、南太平洋島嶼国のなかでも華人人口が最も多いタヒチなどを中心とし、そこで華人が「オセアニアン・チャイニーズ」としての自己像を表出してきた過程と現状を明らかにすることを目的とする。本年度は、上記の目的のもと、日本で入手可能な先行研究や文献資料の収集と整理を継続した。他方で、研究の範囲をオセアニア華人の主要なルーツでもある広東省、およびそこから移住したベトナム、マレーシアなどにも広げ、これまで収集したデータをもとに、環太平洋における動向を比較した。例えば、私は、前科研でベトナムのンガイ人をめぐる調査を実施し、彼らのアイデンティティをめぐるデータを蓄積した。それは本科研の関心に照らし合わせると、広東省からベトナムに移住したンガイ人が現地の華人(特に客家)と出会うことで、現地化した中国人意識を表出していた現象であったともいえる。比較研究を通して、「オセアニアン・チャイニーズ」意識の表出はオセアニアだけでの現象ではなく、環太平洋という圏域である程度汎用できる可能性があることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大により太平洋島嶼部への渡航が困難になり、日本で入手可能な先行研究や文献資料の収集と整理を継続している。しかしながら、特に人類学という分野において海外でのフィールドワークが実施できないことの影響は大きく、オリジナリティのある論文が執筆できない状況に置かれている。本年度は、その範囲を環太平洋の客家社会に拡げたが、これまでの研究成果の整理や中国語への翻訳という形で成果の刊行をおこなうにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大状況とそれに対する太平洋島嶼国の水際対策のありかたによって、今後の研究推進方策がかわってくる。目下、当初の主要対象地域であったタヒチまたはバヌアツでのフィールドワークを検討しているが、状況に応じてこれまで調査経験のあり人脈も整っているハワイでの調査を視野に入れる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により海外調査ができなかったため、次年度に繰り越した。次年度は海外調査で予算を使用する計画でいる。
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