2021 Fiscal Year Research-status Report
インド西部の地方都市における宗教実践とローカリティ形成に関する人類学的研究
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19K01217
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
三尾 稔 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 教授 (50242029)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド / 南アジア / 宗教 / 祭礼 / 都市 / ローカリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症の世界的流行のため、研究対象としているインドでの現地調査の実施は見送らざるを得ない状況が続いているが、同感染症流行前に本科研費も一部利用して行った現地調査の成果に基づき、インド西部の地方都市の祭礼と同地におけるローカルな共同体の持続と変化に関して、「宗教祭礼の持続と再生―地方都市の女神祭礼にみる地域性の再生産」と題した単著論文(査読付き)を刊行した。この論文は、申請者が単独の編者として編集出版した『南アジアの新しい波 上 グローバルな社会変動と南アジアのレジリエンス』(2022年3月刊。昭和堂。掲載頁273-296)所収の論文である。この論文では、調査対象地域固有の女神祭礼の伝統を取り上げ、植民地期以前の記録を参照して、この祭礼が王権と密接に関連しつつ、カーストごとに形成される都市街区のアイデンティティー形成にも重要な役割を果たしてきたことを指摘した。また王国が消滅した現代インドにおいて、この祭礼が観光化される中でも、街区のアイデンティティーの維持において需要であること、またヒンドゥー社会において周縁的な位置づけに甘んじてきたダリトの人びとの社会進出の重要な契機となっていることを明らかにした。インドの地方都市における街区形成の論理、またここに果たす寺院や祭礼の役割について、従来文化人類学的な研究はほとんどなされていない。またこれが現代インド社会においてどのような意味を持つのか、という点も不明であった。本論文はこれらの点を実地調査の成果に基づいて記述・考察したものであり、インドの都市社会研究、宗教研究の進展に大きく寄与するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の世界的流行により、計画していた現地調査が全く行えない状況にあるため。しかし、その中でもこれまでの調査に基づいた査読付きの学術論文を執筆・刊行できたのは大きな成果であったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象としているインドでは、現在は新型コロナウィルス感染症の流行は収束傾向にある。そこで今年度の夏以降に現地調査を実施する。また、これまでの調査から対象としている祭礼は対象地域出身の英米への移民の間でも維持され、実践されていることが分かっている。経費に余裕があり、かつ英米での新型コロナウィルス感染症の流行状況が好転している場合には、移民先での調査も実施する。調査の成果は地図データにも入力し、祭礼や寺院がローカリティの形成や維持にどのようなインパクトをもたらしているのか、視覚的にも明らかとなるよう成果をとりまとめ、総合的な成果の出版の準備を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の世界的流行により計画していた現地調査が実施できなかったため。2022年度においては、同感染症の流行の収束状況を慎重に検討しつつ、インドおよびインドからの移民の暮らす英米における現地調査を実施する。また、謝金を支払って調査データの整理や入力作業を行う。
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