2019 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological study of possibilities of family farming in rural Senegal under the modern market economy
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19K01221
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 敦 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (60261872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セネガル / 社会主義 / 家族制農業 / 土地戦略 / 農民組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、市場経済の波が押し寄せるセネガル農村において、農民たちがどのようにその状況に対処しようとしているのかを民族誌的調査を基礎にして明らかにしようとするもので、2019年度では、日本において種々のセネガル関連の文献を検討するほか、フランス・パリの国立図書館とポンピドゥー・センター公共図書館においての文献調査を9月に9日間の滞在で行なった上で、セネガル・ティエス近郊のニャイと呼ばれる野菜栽培地域における短期間の聞き取り調査を、11月に1週間の滞在で行った。 日本とフランスで行なった文献調査においては、特にセネガル農村の歴史的経緯と、セネガルにおける開発政策の変遷について、植民地期から独立期、そして現在に至るまでの文献を検討し、特に独立時の大統領で新生セネガルの政策を思想的に支えた、レオポルド・サンゴールの社会主義思想とその社会主義思想の背景にある現状理解、および、同じく独立時の首相として新生セネガルの実際の政策実施に関わったママドゥ・ジャの、現状分析および政策提言を、サンゴールとジャの著作および種々の研究論文を踏まえて検討した。 セネガルで行なった現地調査では、従来の慣習的土地制度を背景とした農民たちの土地戦略と、協同組合的な共同販売や海外からの支援の受け入れを行なっている農民組織の活動戦略を検討した。 こうした研究の成果の一部は、2019年7月に行われた、明治大学リバティ・アカデミーの公開講座「フランス社会主義とフランコフォニー」での「セネガルにおける社会主義の夢の失敗と再生」と題する一般向け講義で報告したほか、現在、投稿論文としてまとめる作業を行なっているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究の初年度として、本年度の研究は基礎的なデータ収集を主たる作業とした。その点で、日本とフランスでの文献調査は概ね順調に進めることができた。しかしセネガルでの現地調査に関しては、大学での事務作業と重なってしまい、十分な時間を取ることができなかったため、必ずしも必要なデータが十分に収集できたというわけではない。とはいえ、今までの調査の蓄積があるので、昨年のデータ収集の成果も踏まえて、現在は、投稿論文の執筆を進めているところである。投稿論文としては、セネガル農村における多重的所有関係が農民の経営戦略に与える影響についての論文と、植民地時代以来、さまざまな農民組織がセネガル農業とセネガル農民の生活向上に果たしてきた役割を明らかにする論文の、二つを予定しているが、この二つの論文は相互に重なり合う部分も多いので、同時に執筆を進めているところであり、こちらもやや遅れ気味とはいえ、全体としては順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、本年度に行なった、日本とフランスにおける文献研究と、セネガル・ティエス近郊の野菜栽培地域での現地調査を引き続き続ける予定である。その際、現在執筆中の論文に合わせて、セネガル独立直後の社会主義政策と社会主義思想について、その特徴をまとめた上で、市場開放の圧力が強まる現在のアフリカ諸国というコンテクストにおいて、農民の種々の経済戦略の意味とその展望を、慣習的な多重的土地制度(これについては、すでに論文を発表している)と結びついた農村の社会制度を踏まえて、明らかにしていきたい。論文については、一つは文化人類学の専門雑誌に、もう一つは開発学の専門雑誌に投稿する予定でいる。
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