2020 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological study of possibilities of family farming in rural Senegal under the modern market economy
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19K01221
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 敦 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (60261872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 所有論 / 多重レイヤーシステム / 協同組合 / 構造調整 / 自治村落 / セネガル / 柳田国男 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、次の二つのテーマについて文献調査を行なった。 第一は、セネガルの協同組合や農村組織の分析を所有論の理論枠組みで検討するために、ロックやマルクスの所有論、および現代経済学の財産権理論、コモンズ理論を押さえた上で、文化人類学におけるル・ロワとベンダ=ベクマンの所有理論を整理した。その上で、所有をめぐる諸関係を多重レイヤーシステムとして捉える視点から、協同組合・農民組織を土地所有なども含めた所有システム全体の一部をなすものとみなす理論枠組みを提示し、その理論枠組みを用いて、独立直後のセネガルの協同組合の成立とその失敗、および構造調整以降の農村組織の成立とその問題点について分析を行った。そして、所有システムは、様々な主体が様々な財に権利を持つ、種々のレイヤーを構成するが、その互いの関係の結びつき方が汚職を生んだり、人々の支持を獲得することに貢献し、協同組合や農民組織の成否を決めていることを明らかにした。その成果は、現在、文化人類学の専門誌に投稿中(査読中)である。 第二は、上記のセネガルの協同組合・農民組織のあり方に対する比較の視点を持つために、明治期から1990年ごろの農協改革に至るまでの日本における農業協同組合の歴史を、経済史家の斎藤仁の自治村落論を手掛かりにしながら、特に最初期の日本の協同組合行政に関わった柳田国男の協同組合思想に焦点を当てながら検討し、柳田国男の協同組合思想の持つ先見性と、彼が把握しきれなかった日本の協同組合の問題、および柳田国男の協同組合思想の限界の検討を行った。明治政府は柳田の協同組合論は政策としては採用せず、その政策論は戦後になって採用されるが、柳田はその背後にあった政治過程を熟知しながら理論化しなかった。この研究の成果は、埼玉大学教養学部紀要に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も、昨年度と同様に、セネガル農村での現地聞き取り調査とフランスでの文献調査を予定はしていたが、コロナウイルス感染状況の拡大のため、セネガルもフランスもロックダウンを行ったり国境を閉鎖したりしたため、現地を訪問することはできなかった。そのため、補充調査を必要としていた一部のデータは収集したり確認したりすることができなくなり、結果として研究の進捗状況は遅れることとなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、セネガル農村の現地聞き取り調査とフランスでの文献調査ができなかったため、次年度にはセネガルやフランスを訪問し、必要なデータの収集をしたいと考えている。しかし、現在の状況では、現地のロックダウンの状況や国境閉鎖の状況が改善する見通しは立っていない。そこで、どうしても現地訪問が不可能であれば、引き続き日本で入手可能な文献データの収集に努め、さらには統計分析を含めた研究手法の採用も考えている。
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Causes of Carryover |
本研究の予算のほとんどは、セネガルでの現地農村調査と、フランスでの文献調査のために必要な費用であるが、コロナウイルス感染状況の拡大により、両国ともに訪問することができなかった。そのため、渡航のための予算及び現地で用いる予定だった調査費用は、支出することができず、その結果、次年度に繰り越すことを余儀なくされることになった。
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Research Products
(1 results)