2021 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological study of possibilities of family farming in rural Senegal under the modern market economy
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19K01221
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 敦 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (60261872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 所有権理論 / レイヤー・アプローチ / 農村アソシエーション / 非私的所有 / 社会的経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、本来は研究対象地であるセネガルの農村でフィールドワークを実施して、それに基づいて今日のセネガルの農村の現状を分析することを課題とした研究であったが、過去2年間にわたって、コロナウイルス蔓延に伴う種々の制約のため、現地に行くことができなかった。そこで、次善の策として、次の二つの研究を行なった。 (1)文献調査。フランス・パリに10日ほど滞在して、国立図書館において関連資料の収集に当たった。ここでは、主として、1960年代のアフリカ社会主義に関連する文献と、植民地時代における農村経済についての文献(論文および行政報告)を収集した。 (2)以前に収集したデータをもとに、セネガルのアソシエーションを所有論の観点から分析した論文を発表した。本論文は、現代経済学における所有権論(財産権論)の視点をもとに、文化人類学における所有理論(フォン・ベンダ=ベクマンのレイヤー分析、ル・ロワのマトリクス分析、および三浦のレイヤー・アプローチ)に基づいて拡張することで、経済学の所有権理論の持つ所有権概念の文化的バイアスを補い、それにより、伝統的社会秩序と近代的社会制度の重合・節合関係を明らかにすることで、独立直後の協同組合政策の失敗のメカニズムと、今日の農村アソシエーションの機能のメカニズムを分析した。こうした概念枠組みにより、今まで印象論的に伝統社会と現代社会の区別が論じられてきたところを、より分析的にアプローチすることが可能になった。この論文は、今後引き続き行う予定のフィールドワークに向けた、問題の理論的整理という側面を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れている理由は、端的に、新型コロナウイルスの感染流行に伴う渡航制限のため、フィールドワークに出られないからである。ようやく11月になって、若干、制限措置が緩和されたために、パリの国立図書館までは行くことができたが、まだセネガルでの現地フィールドワークは難しかった。また、コロナウイルス対策に関して、大学の授業が全てオンライン化されたため、そのオンライン授業の準備に通常よりも大幅に時間が取られてしまったということも、副次的ではあるが、もう一つの理由となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航措置が大幅に緩和されることが予想されるので、可能な限りフィールドワークを行いたいと考えている。その中でも特に、商人の活動について調査を行いたい。また、2021年度に発表した論文「現代市場社会における非私的所有の公正性と政治的機能」が、問題の理論的整理であったことを受けて、フィールドデータに基づくより詳細なデータの分析による裏付けを進めていきたいとを考えている。その上で、1980年代にロバート・ベイツが行った研究を参考に、構造調整が一層進展する一方でインターネットが普及する、今日の農村開発と国家の関係について、論文としてまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
本研究は、セネガルでのフィールドワークを前提とした研究であり、研究予算の多くを現地調査及びパリでの文献調査のための費用として計上してある。しかし2020年度から、新型コロナウイルス感染拡大に伴い日本、フランス、セネガルの各国で渡航制限が実施されたため、2020年度は海外渡航が全くできず、予算を消化することができなかった。また2021年度も、フランスでの文献調査こそできたものの、依然としてセネガルでの現地調査はできなかった。そのため、2020年度予算はそのまま2021年度に繰越となった上に、その2021年度予算も大幅に余ってしまい、次年度使用額が生じることとなった。2022年度は、この遅れを挽回するべく、セネガルでの現地調査を1回、およびパリでの文献調査を1回、それぞれ実施したいと考えている。
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