2022 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological study of possibilities of family farming in rural Senegal under the modern market economy
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19K01221
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 敦 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (60261872)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ / 家族制農業 / 協同組合 / 所有論 / 汚職 / 市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在のアフリカ諸国の農業は、基本的には家族制農業であり、今後のアフリカ経済を支えていくのも家族制農業であると予想される。そして、他の多くの国でもそうであるように、現代の市場経済の中で家族制農業を維持するには、協同組合の活動が不可欠である。それは本研究で対象とするセネガルでも同様である。セネガルでは、20世紀半ばに独立した当初は社会主義政策を実施して農村に協同組合を普及する事業を進めたが、その後1970年代にその政策は失敗し、構造調整政策の受け入れを迫られることになった。しかしながらその構造調整政策により政府が公共部門から手を引いて行った時、その空白を埋めるように、今度は農民の自主的な協同組合活動が活発化して現在に至っている。本研究は、なぜ独立直後の協同組合政策は失敗したのか、そしてなぜ今日の協同組合運動は活発化しているのかを、農家の経営戦略との関係で明らかにしようというものである。またその際に、合わせて、同じ枠組みから、日本の協同組合の発展を検討し、アフリカの協同組合の分析の参考とした。理論枠組みとしては、すでに研究代表者がフランスとフィリピンの研究で用いた、所有論の枠組みを用い、土地所有の分析手法を協同組合の組織の分析にも展開できるように拡張した。 研究の結果、独立直後の政策によって設置された協同組合では、協同組合の人間関係は、農村のさまざまな所有や呪術に基礎を置く人間関係の延長の上に位置付けられたが、しかしその人間関係の質が、契約と市場に基づくものに置き換えられることによって、深刻な汚職をひき起こし、結果として農民の生活の安定を保証できなくなっていたのに対し、現在の農民の自発的な協同組合組織では、その人間関係は従来の人間関係に基礎を置いていることが明らかとなった。しかし、残念ながら、こうした人間関係も市場の中でどれだけ機能するのかについては、まだ検討が必要である。
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