2019 Fiscal Year Research-status Report
農山村集落の老いを支える営みに関する比較民俗学的研究
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19K01223
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加賀谷 真梨 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (50432042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農山村集落 / 過疎高齢化 / 支えあい / 家族・親族 / ケア / 親族 / シンルイ / 茶飲み |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、福島県金山町の人口規模の異なる複数の山村集落を主たる調査地とし、日常生活における世代間交流や高齢者同士の営みに着目してフィールドワークを行い、それぞれの集落における老いを支える多様な営みを析出する。その上で、申請者のこれまでの調査地である沖縄県・波照間島と比較検討し、老いの文化の比較研究として結実させることを目的としている。 2019年度は、高齢化率が50%を超え冬季は雪深くなる金山町の本名集落において夏と冬に調査を行った。その結果、血縁や姻戚関係からなる親族組織としての「シンセキ」よりも、親族の他に親しい友人や近隣の家との間に任意に関係を取り結び超世代的な付き合いが展開する「シンルイ」が、冠婚葬祭時において扶助役割を担い、高齢者の精神的支柱となってきたこと。また、女性が農作業の合間に持つ「茶飲み」が、高齢者同士の身体的・精神的状況の把握という新たな機能を帯びていることが明らかになった。但し、冬季の間、子の住まいや高齢者専用住宅に一次的に移動する高齢者も1割程度いることから、親世代は最期まで家で過ごすべく既存の社会の仕組みを流用してきたものの、高齢者のケア役割を「家族」が担うという考えは子ども世代に規範化されていることが指摘できる。 なお、2019年度は主に波照間島における地域介護の実態について研究発表を行った。島では介護施設ではなく家で最期を迎えることに重きが置かれているが、その背景を家という空間の象徴分析から考察し、日本文化人類学会や中国社会科学院日本研究所・国際協力局主催国際シンポジウムで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に調査を行った金山町本名集落は、大学のゼミでも民俗調査を行い、村落に関するまとまった情報を間接的に得ることができた。また、沖縄の離島に関する研究成果のうち、北京で開催された国際シンポジウムで発表した原稿は、中国語に翻訳され論文集として中国で出版される予定であり、着実に研究成果が実を結びつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19と共存しなくてはならない現在の状況を考慮すると、高齢化率が高い農村に出向いて対面で聞き取り調査を行うことは極めて難しい。当初の研究計画の遂行を優先し、調査を遂行することは、調査者の暴挙として批判されかねない。 したがって、2020年度は2019年度の研究計画として挙げた「1.民俗学、文化人類学(老年人類学)、老年学における「老い」に関する文献調査」をより深化させ、初年度の悉皆調査で得たデータとの有機的接合方法を検討し、方法論の深化と精緻化を図ろうと考えている。
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Research Products
(6 results)