2023 Fiscal Year Research-status Report
A studyon global commoditization of traditional textiles and the change of their local meanings
Project/Area Number |
19K01225
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中谷 文美 岡山大学, 文明動態学研究所, 教授 (90288697)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 伝統染織 / 仲介者 / 消費 / 文化遺産 / 手仕事と機械 / オーセンティシティ / 文化横断的消費 / 物質文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も国内において、伝統染織の生産・流通・消費の各段階における仲介者の役割についてのインタビュー調査および参与観察を実施した。昨年度に続き、アジア地域および日本の伝統染織品の収集・展示を行っている博物館等を訪問し、情報・資料収集を行ったほか、和装産業における流通の問題にも取り組んだ。 伝統染織品については、一定の生活圏内で生産と消費の輪が完結するような状況が続いている事例は少数となり、それゆえに、生産現場の外部に存在するアクターの関与がさまざまな形で重要となってきた。とくにグローバルな市場においては、「手仕事」であることにまつわるオーセンティシティを重要視する傾向が強まっている。だが同時に、生産者やローカルな消費者にとってもオーセンティシティが意味を持つ状況が生まれてきた。他方で、素材や技法、生産形態の変化の過程において、「プリント化」と呼べるような現象も生じている。これは、かつて手作業によって生み出されていた布製品がシルクスクリーンや機械プリントなどにより大量生産される現象をさすが、そればかりでなく、技法の変化により特定の布に表現される色や文様の意匠だけが取り出され、前景化されていくことも意味する。オーセンティシティの源泉は多様であるため、ここでプリント化と呼ぶ現象が単純にオーセンティシティを損なう方向に働くとは限らない。ローカルな布の着用者にとって、自らのアイデンティティを表明する手段としての布は、従来と異なる素材や技法に製作されたとしても、変わらずオーセンティックであると判断できる可能性もあるからだ。 誰がどのような文脈でプリント化を受け入れ、あるいは拒絶するのかを丁寧に検討することで、伝統染織の生産・流通・消費に関わる多様な仲介者の相互作用を見通すことが可能となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代表者の所属機関の変更などに伴い、今年度も海外調査を実施するに至らなかった。そのため当初の研究計画は十分に遂行できていない。他方、国内調査は一定程度充実しており、伝統染織の生産・流通・消費の各段階における仲介者の役割について、考察を進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2024年度には、研究計画にあるラオスおよびインドネシアでの調査を実施する。これまで蓄積した国内調査での知見を踏まえ、総合的な分析を実施する。
|
Causes of Carryover |
2023年度も海外調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。2024年度は本研究課題の最終年度であり、ラオス、インドネシアにおける海外調査を実施する。
|