2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・サウスからの新たな市民社会論―ヴァナキュラーな社会性の民族誌的探究
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19K01226
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関 恒樹 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 教授 (30346530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会開発 / 市民社会 / ジェントリフィケーション / 統治性 / ネオリベラリズム / 貧困 / 社会的つながり / フィリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、本研究課題の二年目であり、フィリピンでの現地調査を予定していた。しかしコロナ禍のため、渡航はかなわず、現地調査は断念せざるを得なかった。代替策として、関連文献を渉猟し、理論的視覚のさらなる明確化、研究テーマの絞り込みを継続した。同時に、これまでの成果を編著などとして刊行した。 グローバルサウスの都市に共通する現象として、ジェントリフィケーションとスラム移転による「郊外化」が指摘できる。そのような郊外による再定住地に移転した住民の生活実態の調査は喫緊の課題となっている。特に、住民の生活保障提供において、国家の役割が縮小する中で、住民と市民社会組織の協働によって、いかなる新たな共同性や社会的つながりが生まれてきているのかを明らかにすることは、今日のグローバルサウスの社会動態を明らかにする重要な課題である。グローバリゼーションと新自由主義的潮流の中で、これまで国家によって担われてきた福祉や社会的保護が、次第に市場化されていくなかで、不確実性やリスクが増大する人々の生活を支える社会性、つながりを生み出すアクターに関する民族誌的資料の蓄積が求められている。 上記のような関心の下に、これまで執筆してきた論考を、編著として刊行した。まず、Seki, K. (ed.) 2020. Ethnographies of Development and Globalization in the Philippines: Emergent Socialities and the Governing of Precarity. (Routledge, July 2020)。そして、『グローバリゼーションとつながりの人類学』(共編著、2020年3月、七月社)である。 これらの研究を通して、次年度以降のフィリピンでの現地調査に向け、より具体的な計画と立てることが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、フィリピンでの現地調査を断念せざるをえず、資料収集は必ずしも予想通りには進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度中のフィリピン現地調査を試みる。それがかなわない場合には、二次資料に基づいて、研究成果をまとめ、学会発表、論文などの形で公表する。
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