2020 Fiscal Year Research-status Report
農耕民の生業変化と定住化インパクト:東南アジアにおけるモンの事例を中心に
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19K01227
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中井 信介 佐賀大学, 農学部, 准教授 (90507500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生業 / 農耕民 / 定住化 / モン族 / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
自然資源を利用した生業とそれに関連する文化は、とくに20世紀以降、世界的に大きく変化しつつあり、人類史の視点からみても重要な転換点にある。本研究では、人類の生業史について、生業の変化とその要因を考える試みの1つとして、山地の森林地帯で焼畑を行ってきた農耕民の事例を、定住化インパクトの視点から検討する。主に検討する事例は、中国南部を故地としておよそ18世紀以降に、ベトナム、ラオス、タイへと分布域を拡大してきた、農耕民モン(Hmong)である。 2020年度は本研究の研究期間(2019年度から2022年度の4年間)の2年目に相当し、1年目の結果を踏まえたフィールドワークと聞き取り調査を主に実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を受けて、海外調査が困難となった為、主に1年目の調査結果の整理と文献の検討により、研究を実施した。その成果は以下のとおり。 モンの生業に関わる定住化のインパクトについて、これまでも何度か訪問しているタイのナーン県、およびラオスのサイニャブリー県の事例から、定住化時期との関連の検討を進めた。そして、これまでに得られた結果を元に、2つの論文(中井2020とNakai and Ikeya 2021)を出版した。中井(2020)では、1980年頃から定住化した事例を元に、人が生き物を「飼う」動機に及ぼした影響を考察した。またNakai and Ikeya(2021)では、先行研究資料の整理と再解釈をして、当該地域において先住していた狩猟採集民ムラブリ(Mlabri)と19世紀末頃に到着した農耕民モンの関係を、その成立経緯と継続性の視点から考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目に、従来から訪問経験のある地域を再訪して、研究に必要なフィールドワークと聞き取り調査を開始できているが、続きの調査を2年目に実施することができていない。今後の具体的な課題は明確であるが、調査実施の見通しが不明のため、1年目の調査結果の整理と文献検討を主に行い、予備的な成果のとりまとめを進めた。このように、研究期間の2年目としては相応の成果を得ていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の研究推進については、1年目までに課題や実施内容が明確になっているので、海外での調査が可能になれば特に問題はないが、2年目に調査が実施できなかったことを踏まえて、現在までに得られている調査結果の整理と文献検討を中心とした研究成果のとりまとめを並行して実施する。3年目の後半時期に調査が可能となれば、計画に沿って、比較のための新たな調査地を設定して研究を進める。
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Causes of Carryover |
2020年度のコロナ禍の影響で、予定していた海外出張(フィールドワーク)と国内出張(学会参加等)を中止したため。次年度の海外出張(フィールドワーク)、国内出張(学会参加等)および文献収集で使用する。
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