2020 Fiscal Year Research-status Report
中国のポスト社会主義的状況における社会的弱者の「文化」創造と共生論理
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19K01229
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
奈倉 京子 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (70555119)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 障害者家族 / 民間組織 / 中国 / ポスト社会主義 / ソーシャルワーク / 「新しい社会性」 / 中間的領域/組織 / ライフストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
中国では、2000年以降、市場化・グローバル化とともに、障害者に関わる制度や社会環境が政府によって整備され始め、加えて、欧米よりソーシャルワークの概念が輸入されたことにより、社会福祉全般への関心が高まっている。だが、当事者(障害のある人及びその家族)や障害のある人々を支える現場の支援者にとって、こうした政策や社会変化はどのように作用しているのだろうか。他方で、2000年以降の中国における社会変化に着目した閻雲翔は、面識のない個人が志を同じくする他者と知り合い、家族や階層を越えて社会関係を築ける社会の性質を「新しい社会性」と定義した[閻2012(2009)]。だが、その内実は検証されていない。実際に、中国で障害のある子をもつ親が、家族や社会階層を越えて、他者と支え合いのネットワークを築くことが可能だろうか。 こうした問題意識のもと、本研究では、2000年以降の中国のポスト社会主義的状況の中で立ち上げられた「機構」(民間組織)の実証的な分析を通して、個人と国家の間の中間的領域/組織の内実を明らかにすることを目的とし、中国で障害者人口の割合が高い地域の1つとされる、甘粛省蘭州市に所在する「機構」について、調査研究を遂行している。 2020年度は、前年度までに行なった調査をまとめ、SNSで補充調査を行ない、2本の論文にまとめた。1つは、X知的障害児支援教育センターで行なった参与観察、およびその経営者とそこへ障害のある子どもを通わせる親への聞き取りに基づき、そこが中間的領域/組織としてどのような役割を担っているかを明らかにした。もう1つは、ダウン症のある子をもつ母親のライフストーリーを分析し、彼女たちが障害児の母親であることを、自身の生の営みの中でどのように位置づけているのかということを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度、中国で現地調査を実施することはできなかったが、SNSを利用してすでに協力関係が確立しているインフォーマントから、補充情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書に基づき、2021年度は、次の2つについて調査を継続していく予定である。 (1)中国の障害者家族に対する聞き取りを継続して行う。 (2)すでに複数回訪問している民間組織の活動について、SNSを利用して状況を把握する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大のため、計画していた中国調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。今後、感染状況をみながら、今年度もしくは来年度に計画している調査を実施する予定であり、そのために使用する。
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