2020 Fiscal Year Research-status Report
関西系小芝居(中芝居)の活動実態と地芝居との影響関係―地芝居の価値再発見に向けて
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19K01235
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
浅野 久枝 京都精華大学, 人文学部, 講師 (20700008)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小芝居 / 中芝居 / 大歌舞伎 / 岩井小紫 / 女役者 / 市川市蔵劇団 / 細川興行 / 新鋭歌舞伎 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はコロナ禍により、各地の祭礼時に催行される地芝居公演がすべて中止となることに加え、研究者自身に対する行動制限があったために、研究実施計画の実現はほとんど進まなかったといわざるを得ない。 その一方で、これまでの調査で蓄積した資料の整理を心がけた。2021年2月には「昭和五十年まで活動した中芝居劇団 市川市蔵劇団の軌跡 その一 ―小芝居の歌舞伎で活躍した役者家族とその周辺―」と題する論文を『京都精華大学紀要』第54号に発表した。 この中で、市川市蔵劇団は見事なまでの役者家族であり、また、それぞれの役者達の芸もしっかりしており、中芝居・小芝居の世界の中での一種の梨園のような様相を呈していたことも、聞き取りから明らかにすることができた。また、そしてこの中芝居・小芝居劇団が大歌舞伎から飛び出してくる門閥の無い名題役者たちの受け皿となり、また、中芝居・小芝居で活躍し修業した役者が大歌舞伎の脇役として活躍した事例も見ることができた。これら地方公演を続けた中芝居・小芝居劇団が、大歌舞伎だけではない豊かな歌舞伎の芸を支えてきたという側面を明らかにすることができたと考えている。また、これらの中芝居・小芝居劇団の中には多くの女役者が居たことも確認した。 また、今回は発表できなかったが、中芝居・小芝居独特の演目や演出についての資料の整理もすることができたたため、次の論文にて発表する計画も立てることができた。これらについては、更に資料を集めて、考察していきたい。 これまであまり注目されてこなかった地方公演を中心として活動していた中芝居・小芝居劇団の実態を、ごく一部であるが、発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度はコロナ禍により、各地の祭礼時に催行される地芝居公演がすべて中止となった。また、インタヴューを続けている元中芝居役者二名は、お二人とも80歳を超えてご高齢なため、面会自体を自粛した。その他の関係者に対しても面会による調査は実施できなかった。電話によるインタヴューはわずかに行ったが、フィールドワークはほぼ全く実施することはできなかった。また、市蔵劇団の活動やその他の中芝居劇団を追跡するための、各地の図書館での新聞記事の調査も一カ所の実施に留まった。 行動制限があったために、研究実施計画の実現はほとんど進まなかったといわざるを得ない。非常に苦しい一年であった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍が収まっていない現在、フィールドワークの予定が立てられないのが現状である。長浜曳山祭りは規模縮小の上実施されることになったため、短期間の調査は予定したが、それ以外の祭礼・地芝居の実施は非常に危ぶまれる。全国各地の図書館に赴いての調査は、現状を検討しつつ、可能な限り実施したいと考えている。また、高齢の関係者に対するインタヴューも実施したいが、ワクチンなどの接種状況を勘案しながら、実施を検討していきたい。 内容的には、中芝居・小芝居の中の女役者の存在や、中芝居・小芝居の独特な演目・演出や、大芝居との交流、あるいは旅興行のやり方など、今後、インタヴューを深め、戦後まで活動していた中芝居劇団の研究をすすめていき、また、各地の地芝居の指導者などや演目、演出などについての調査も進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による行動制限があったため、フィールドワークが全くできず、旅費の支出をすることができなかった。今年度もいまだ見通しは立っていない。また、これまでのフィールドワークの音声データを人件費を使って文字化・整理する予定を立てていたが、内容が専門的なため、研究者自身による文字化の方が効率的であることが明らかになったので、人件費の支出は今年度は押さえる方向で考えている。 夏以降、コロナ禍の状況を見つつ、可能ならば地芝居・祭礼時や小芝居関係者に対する聞き取り調査などのフィールドワークおよび各地図書館における新聞記事調査を再開する予定であり、それにより旅費の支出を予定している。また、小芝居あるいは歌舞伎関係の資料は引き続き購入・収集していく予定である。
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