2022 Fiscal Year Research-status Report
写真着彩技術と対話を活用した持続可能な被ばくコミュニティ形成の応用人類学的研究
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19K01237
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
中原 聖乃 北九州市立大学, 地域共生教育センター, 特任教員 (00570053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 英徳 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00514085)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 核実験 / 温暖化 / ワークショップ / 共創 / 超学際的研究 / 被ばく社会の持続可能性 / マーシャル諸島 / 語り |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究代表者の移動に伴う職場環境の変化により、依然としてマーシャル諸島への渡航が困難な状況であった。しかしながら、その中でも、遠隔会議システムを利用した日常的な対話システム、およびマーシャル諸島と日本を結ぶオンラインワークショップを実施した。その結果、多少の情報が集まりデジタルアーカイブにアップロードできたものの、これらの取り組みは、結果的には満足のいくものではなかった。 昨年度の反省として、マーシャルと日本で共に創っているという感覚の欠如、トラウマの記憶を聞き出すという精神的負担、およびアップロードまでの時間的負担があることが分かっていた。そのため、今年度は、遠隔でデジタルアーカイブにマーシャル諸島現地の若者がアップロードできる体制を確立するために、マーシャル諸島の多くの若者が利用しているFBと遠隔会議システムであるGoogle Jamboard を組み合わせた方法を考え、現地の若者と頻繁に、オンラインで対話できるような方法を考えた。また、インタビューをする前に、基礎的なキーワード集めから始め、知識を高めることにした。そしてそのキーワードをもとに、詳細な情報を集めるという二段階方式を取り入れた。こうした作業の管理はホームページやFacebookを用いながら、行った。情報の事例を示すために、研究代表者は、日本の情報を提示し、マーシャル諸島側の若者のモチベーションを高めようとした。 しかしながら、キーワード集めは期待したほどの多くの数が集まらず、また、詳細な情報収集まで進んだ学生は少なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
思ったように進展しなかった理由について、現地コーディネーターと議論するなかで、次のことが分かった。第一は、2年前に作った若い世代を中心としたデジタルアーカイブマネジメントチームのメンバーが、国外への移住、短大の卒業などを理由に、そもそもメンバーの特定が困難な状況に陥っていることである。第二は、マーシャル諸島在住といえども、核問題に対する知識は決して多くなく、キーワードを思い浮かべることが困難であることである。そのため、学生が自主的にインタビューを実施することが困難で、実際には、マーシャル諸島短期大学の教員が用意した質問を用いて、学生がインタビューするという形をとっていた。 昨年度進まなかった理由として、マーシャル諸島側からあげられた理由としては、マーシャルと日本で共に創っているという感覚の欠如、トラウマの記憶を聞き出すという精神的負担、およびアップロードまでの時間的負担であったため、今年度はその対応を行いながらすすめたが、実際には、上記の通り、マーシャル諸島側のデジタルアーカイブを担う学生チームの流動性、および、学生チームの知識が乏しいことで思うような成果を得られなかった。これは、ここ2~3年急激に進んだマーシャル諸島からアメリカをはじめとする人口の国外流出や、財政難による教育リソースの欠如が根底にあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当プロジェクトが立ち上がった際には、マーシャル諸島の若者が自発的にインタビューをし、情報収集することを目標としていたが、今後は、研究代表者がすでにインタビューをした被ばく者やその関係者に直接協力を依頼し、マーシャル諸島の若者に紹介する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの流行が長引き、現地でのイベントを中止したこと、および海外学会発表が学内の規定により不可能であったため、渡航費の支出が大幅に減ったためである。次年度は、現地コーディネーターへの業務委託、およびマーシャル諸島への渡航に予算を充てる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] レジリエンス人類史2022
Author(s)
稲村 哲也、山極 壽一、清水 展、阿部 健一
Total Pages
526
Publisher
京都大学学術出版会
ISBN
481400401X