2022 Fiscal Year Annual Research Report
Political manipulation of legal science in GDR
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19K01245
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 洋一 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 名誉教授 (00114596)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法制史 / ドイツ民主共和国 / ウルブリヒト |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 1958年4月のバーベルスベルク会議についての研究を終了した。参加者のうち、研究者は各大学の公法責任者と「ドイツ国家学・法学アカデミー」(以下 DASR)の幹部であり、彼らの他に問題とされた論文等を公刊した出版社の代表者たちが、党組織の幹部や実務家たちにより、時にはほとんど同一の文言すらを用いた極めてステレオタイプ的な批判を受けている。その内容は最初のウルブリヒトの基調報告に従ったものであり、この会議の全体が公法学に対する、中央から組織され、演出された見せしめ裁判であったことが、改めて明らかになった。しかしこの会議での法学批判の現実化のために繰り返されたカンファレンスでは、結局法学の革新のための具体的な方法を見出すことができなかったことも確認できた。 2. Covid-19のために延期していたドイツでの資料調査をようやく実施することができた。今回はベルリンの連邦文書館所蔵のウルブリヒトの個人文書の調査と、ライプツィヒの州立文書館及び大学文書館所蔵のライプツィヒ大学法学部及び法学部内部の社会主義統一党(以下SED)組織の文書の調査を行なった。ウルブリヒト個人文書では、これまで調査してきたSED中央の組織に保管されていなかった多様な文書、とりわけカンファレンスでなされた報告や発言の草稿を検討することができた。これによって、個々のカンファレンスの議事内容をさらに具体的に再構成することができた。またこのたび初めて調査できたライプツィヒの文書に関しては、1950年代のSEDの頻繁な路線変更にライプツィヒ大学法学部及び党組織が自律的に対応しきれず、とりわけDASRに問い合わせて初めて対応を決めることができた実態が明らかになり、ベルリンを見ているだけでは認識できなかった大学と学問の誘導・統制の困難さが明らかになった。
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