2020 Fiscal Year Research-status Report
2020年中国民法典制定前後における不動産所有権法の理論と実務
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19K01252
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
長 友昭 拓殖大学, 政経学部, 教授 (20555073)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民法典 / 中国 / 人格権 / 氏名権 / 物権法 / 権利侵害責任法 / 所有権 / 土地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、主に中国民法典をめぐる立法過程および立法解説がなされた文献資料、インターネット上の資料に基づいて行った。 中国民法典の制定は、新しい法律の制定であるため、その条文テキストそのものに重要性がある。そのため、条文の全文の翻訳が必要になると思われる。他方で、民法典の大部分は、民法典制定まで現行法として存在していた婚姻法、相続法、契約法、物権法、権利侵害責任法、民法総則等のいくつかの法律(単行法)の改正と見ることができる。そこで、民法典制定における法改正の側面を明らかにするため、民法典の条文翻訳に従来の法も訳出したうえで、改正点を明示して対照可能な資料を公表した。すなわち、長友昭「中華人民共和国民法典における物権編の紹介と試訳――2007年物権法との比較の視点から」拓殖大学論集政治・経済・法律研究23巻1号、135-180頁、2020年10月、長友昭「中華人民共和国民法典権利侵害責任編の試訳――2009年制定の中華人民共和国権利侵害責任法からの改正点・対照資料として」拓殖大学政治行政研究12号、29-51頁、2021年3月、長友昭「中華人民共和国民法典人格権編の試訳――従来の関連規定から見た改正点・対照資料として」千葉商大論叢58巻3号、227-239頁、2021年3月の各稿である。 また、中国民法典の制定において、大きな注目を集めている人格権に関する論点として、立法過程において中国の法学界はもちろん、社会的にも大きな議論がされた氏名権[姓名権]をめぐる最高人民法院の指導性案例の比較法的考察として、長友昭「氏名権、親の命名権をめぐる比較法的考察――日本の実務と中国の指導案例89号「北雁雲依」事件、中国民法典の人格権規定から」拓殖大学論集政治・経済・法律研究23巻2号、1-21頁、2021年3月を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国民法典の制定は2020年に予定されていたが、内外の諸事情により、その審議の遅れが生じ、制定の延期が懸念されていた。新型コロナウイルスの影響も加わり、全国人民代表大会の開催の延期されることとなったが、実際にはその遅れは2か月ほどで、5月28日には全国人民代表大会で採択され、2021年1月1日から予定通り施行されることとなった。このような状況から、中国の法学界・実務界において、立法解説書、実務解説書、研究論文が多数公表されることとなった。これにより、豊富な研究資料を用いて研究を進めることが可能となり、この期間に進捗を予定していた、あるいは予定以上の内容の条文翻訳や研究論文を研究成果として公表することができた。 その一方で、新型コロナウイルスの影響で、中国への渡航が事実上不可能となっているため、現地での実態調査や聞き取り調査を進めることはできなかった。中国民法典の制定に起因する書式や契約書の変更、実務家の意識の変化等についての調査を計画していたが、今後の調査に関する関係者とのメール等での連絡は継続しているものの、実際の調査は遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響で、中国への渡航が事実上不可能となっていることについては、先行きの見通しが立たないというのが現状である。現地調査や聞き取り調査については、そのような調査が可能になり次第再開することとして、それまでは研究者をはじめとする関係者とのメールやオンラインでの交流を継続することとする。 その一方で、中国での関連文献の発表はかなり活発に続いているようである。幸い、これらを日本の書店・代理店経由で取り寄せることは可能である。現地に出かけて、実物を閲覧できないという不便さは否定できないが、中国の研究者と連絡をとりつつ、重要な文献を見逃さないように注意して、文献の購入・入手に努め、これらを用いて理論上の課題や実務上の事例等の研究を進めたい。 また、中国での調査が制限される一方で、日本国内での中国民法典に関する研究も注目に値する。これらの研究を進める研究者等とも連携して、各研究の成果の対話や統合を目指すプラットホームを作るような研究にも取り組むこととする。
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Causes of Carryover |
本研究では、2020年度の民法典制定の前後で、現地での実態調査、聴き取り調査、資料収集を複数回計画しており、そのための海外旅費を確保していたところ、新型コロナウイルスの影響により、2020年の1月以降その執行が困難となった。そのため、現地調査3回分相当の次年度使用額が生じている。 これについては、一般的な渡航が再開されれば、その費用に充当するものとするが、必ずしも研究期間内での渡航再開が見通せないため、計画以上に文献収集を充実させる費用に充てることも検討している。
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Research Products
(5 results)
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[Book] 森林と法2021
Author(s)
小賀野 晶一、奥田 進一
Total Pages
168
Publisher
成文堂
ISBN
978-4-7923-3413-0