2019 Fiscal Year Research-status Report
For understanding and establishment of "human dignity" as legal concept -- a basic study from the viewpoint of legal philosophy
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19K01253
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
服部 寛 南山大学, 法学部, 准教授 (30610175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 法哲学 / 人間の尊厳 / 尊厳 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、当初の研究目的と計画に沿い、以下のとおり、研究に従事した。 まず、日本・ドイツにおける人間の尊厳の概念について、特に、第2次世界大戦の戦前・戦時期・戦後直後のドイツ・日本における状況について検討を行った。これらは後にそれぞれ論文を公表した。また、本研究が注目している、Dietmar von der Pfordten氏の「人間の尊厳」概念に関する研究についてフォローし、その読解の深化と現代の日本における意義について、検討を重ねた。この点については、同氏の理論に依拠しながら、国際法哲学社会哲学連合第29回世界大会のSpecial Workshopにて報告を行い、現在、公表の作業に従事している。2020年3月半ば~末に、同氏の訪日と講演会を計画していた。しかし、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大等に伴う、日本・ドイツの社会的な混乱のために、この企画をすべて中止せざるを得ない状況に追い込まれた。このような形で企画を断念せざるを得なくなったのは残念ではあるが、本研究課題の採択期間内で可能なれば機を改めたいと考えており、また、同氏が講演予定であった諸論稿については、翻訳を行うなどの形で、今年度に成果を公表していきたい。その他、申請者が取り組んでいる近現代世界における文明化に関する共同研究でも、本研究課題に関連する成果を発表することができた。これについては、異分野の研究者から多くの示唆を受けており、文化/文明論という観点からとりわけ日本の「尊厳」概念の特質を浮き彫りにしていくという道筋がより開かれることとなった。研究の対象や素材のインプットとして、日本やドイツで比較的まだ知られていないが興味深い戦時・戦後の諸見解を探るほか、まさにいま混乱を来している日本ひいては世界において、尊厳概念とは何かということについて、冷徹な議論を展開してきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者自身の研究成果としては、研究課題における概ね順調に公表できており、これまでの計画に概ね沿った形で、国際法哲学社会哲学連合の世界大会での報告の遂行し、計画したところのことは概ねこなしている。他方で、上述のように、von der Pfordten氏の訪日とそれに伴う講演会、またその邦訳等、本研究課題に関連するもので予定していたものが、すべて中止せざるを得なくなっている。これに関する成果の公表についても、今年度において改めて行いたい。加えて、現在の社会的混乱の収束の目処が立たないこともあり、本研究課題の採択期間に、そうした中止となった分の企画を改めて実行できるか、態勢を再構築しながら道を模索しているところである。他面で、新型コロナウイルス感染症に伴う全世界的な混乱のなかで、「人間の尊厳」がどうなったのか、という、混沌の状況の中にある我々の周りから「人間の尊厳」についての(現場に)近い声や実体験を元に、新型コロナ「以前」の「尊厳」論とどのような関係があるかについて、検討をふかけなければならないのではないか、という現下の状況に鑑みて出現している大きな課題についても、我々は等閑視することはできない。このアクチュアルで複合的な諸問題につき、法廷概念としての「尊厳」が占めるべき位置を、はかっていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の計画については、当初の予定から基本的に変更を加えることなく、次の諸点に取り組む。まず、von der Pfordten氏の「人間の尊厳」論に関わる、訳書の出版と、初年度に実施する予定であった同氏の講演の邦訳とについて、公表に向けて従事する。とりわけ前者については、出版社との交渉など、越えるべきハードルがまだ存しているが、実直な成果の発表に向けて着実に前進していきたい。年度の後半では、これも当初に予定していた、日本およびドイツ・EUにおける「人間の尊厳」をめぐる最新の状況について、例えば医事法や生命倫理の方面(における「生命の尊厳」論)にもアンテナをはり、研究関心の拡大をはかっていきたい。また、日本については、初年度の研究成果から、とりわけ尊厳の担い手としての「國體」について、検討の課題が立ちはだかっている。この点について、法思想(史)的観点から考察を深め、また昨今様々な文脈で関心を集めている「国体論」の議論状況にも適宜目配せをしつつ、「國體」の尊厳から「人間」の尊厳へと方向転換を行うことが(如何にして)可能か、検討を進めることにしたい。
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Causes of Carryover |
2019年度では、3月に、Dietmar von der Pfordten氏をドイツから招き、そのための旅費や謝金等を当初の予算として考えていた。だが、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに対する対策や社会の混乱によって、同氏の訪日の計画が実現できなくなった。その点に関連する、前年度の各品目の予算等につき、2020年度か2021年度にまわすこととして、社会状況を見て同氏の訪日の計画を再度試みつつ、また本研究課題に関する研究の深化を行うため、資料・文献をできるだけ広範に行い、研究環境の整備に取り組むこととしたい。
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Research Products
(4 results)